この世界の人間は体内にマナを取り込み、利用することで、魔法を行使することが出来る。
だが私には魔力を放出する器官に欠陥があり、体内に魔力を取り込むだけで放出ができない。
放出ができないと言うことは体内にマナが蓄積されていく一方で、いずれ蓄積されたマナに体が耐えきれず十歳の誕生日を迎えずに死ぬだろうと医者に言われた。
それを聞きあたしの両親は嘆き悲しみ、周りからは神に見捨てられた哀れな子として見られ続けた。
だが、六歳の時あたしの体に変化が出た、母が料理で使用していたフライパンの取手を持つを取手がぐにゃりと曲がった。
そのまま金属の部分を握り込むとフライパンが変形し始める。
あたしはそれが面白くなり小さくなるまで丸め、母に見せた。
父も母も驚いたが、それでもすごいと褒めてくれた。
どうやら体にマナを蓄積する一方だったが体がマナに順応し、全身の筋肉にマナを宿らせ常人に比べると異常なほどの身体能力を出せるようになっていたようだ。
そんなことを理解しないで、あの事件が起こった。
あたしの友達が近所の男子に嫌がらせを受けていると言われ、あたしは男子にやめてほしいと訴えに行った。
するとその男子はあたしに何か言われたことに腹を立てあたしを殴った。
殴られたあたしは殴られたことに腹が立ち、怒りに任せて男子の腹を思いっきり殴った。
殴った瞬間、男子は口から血を吐いた。
何が起こったのかわからず、あたしは殴った箇所を見るとあたしの腕が男子の腹を貫き、
そのまま男子は何もできずにあたしの方に倒れかかった。
あたしの友達は血を見て悲鳴をあげ、男子の友達も私に恐怖を感じ、尿を漏らし、立つこともできなくなっていた。
友達の悲鳴を聞いたものが集まってくる。
それからあたしはどうなったか覚えていない。
でも優しかった親は、あたしを捨てた。
そこから地獄が始まった。
あたしは親に捨てられ、明日食べる食糧さえもなく、初めは助けてくれる人を探していたが誰も助けてくれない。
それどころか人殺しと石を投げつける者もいた。
そしてあたしは盗みを始めた。
初めは簡単に屋台などから盗み、その日の食糧を調達していただけだった。
スリをして小銭を稼ぎ、力に物を言わせ強奪することもあった。
そんな生活を四年以上した十歳の時、どこからかあたしが異常な力を持っていることを嗅ぎつけた野盗グループにスカウトされた。
正直、飯が食えるならそれでいいと思ったから、そのまま野盗グループに入った。
そこからはグループで商人を襲い物を奪い取ることが多くなった。
この力のせいであたしは家族を失い地獄のような生活をしたけど、この力のおかげでただの鉄の棒を振り回すだけで、商人は怯え、商品、金を出す。
正直、最高に生きてることを実感した。
何度も商人を襲い仕事がうまくいき、ある程度軌道に乗ってきた時、
リーダーが大きな仕事と言ってどこからかある貴族の娘が馬車を使って一人で移動するらしいという情報を仕入れてきた。
馬鹿みたいなやつもいるもんだとあたしはそいつを見下してた。
だって普通に考えてそうでしょ、貴族の娘が一人で馬車で移動?
そんなのは襲ってくださいって言ってるようなものだ。
あたしは簡単な仕事だと思っていた。
そして貴族の娘がどこからか屋敷に通る予定の日時、いつも通り街道で待ち伏せして、貴族の娘の馬車が来るのを待った。
少し待つと、間違いなくあの馬車だとわかるほど、豪華な馬車が一台通りかかった、
グループのみんなは本当にきたぞ、嬉しそうに今夜は娘を犯すとかいって笑っていた。
リーダーが合図を出して、いつも通りの手順で馬車を襲うと簡単に馬車は止まり、御者は逃げ出した。
中からは綺麗な顔立ちのあたしと同じ年くらいの少女が出てきた。
その少女は体のラインが分かる服を着ていた。
そんな服装にグループの男どもは下衆な目を向けていたのは覚えている。
その後少女が短剣を懐から出した思うとあたしは地面に伏せていた。
周りにいた男どもは形も保てない程の攻撃を受けたのか、ただの肉片となっていた。
そして、少女があたしの方へ歩いてきた、よくわからない力にあたしは恐怖した。
あたしが初めて人を殺した時、まわりにいた男子たちはこんな気持ちだったのかと理解できた。
少女は地面に伏せているあたしの前にしゃがみ込み
「私と同じなのね、どう私のメイドにならない?」と言われた。
初めは馬鹿にしているのかと思った。
綺麗な服を着て、髪も整えられている貴族と明日の食事もままならない野盗のあたしが一緒?
だけど、行くあてもないし、このまま警備兵に突き出されても良くて高山での奴隷、もしくは死刑が待っているだけだから、
仲間を見捨てて、その少女についていくことにした。
その後はメイドになるため厳しい教育を受けた、言葉遣い、動作、マナー、礼儀
でも、衣食住が全て担保されている環境なんて初めてで、これを頑張るだけでいいのであればあの地獄のような日々に比べたら楽だった。
メイドの教育を受けている最中屋敷内では少女を一度も見ることはなかった。
でも、たまたまだろうとその違和感を無視していたが、教育が終わりようやく少女のメイドとして働く時に違和感の正体に気づいた。
少女を一度を見ることなかったのは当然だ、彼女は離れで生活していたのだから。
必要な時のメイドが来て、必要最低限の会話と必要最低限の対応だけ本館に戻るらしい、
なぜそんなことになっているのか、彼女に聞きたかったけど聞けなかった。
ただそれが当たり前で、何も感じていない彼女を見て私だけは何があっても一緒に居ようと決めた。