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第四十四話

ヴァプンコヌングル遺跡は村長の言った通り、山を目指して進むと十分程進むと到着した。

ルーネに乗っていたから十分程だったが、おそらく普通にくるともっとかかるだろう。


遺跡はまだ幸太郎だった時に見たことのあるマヤ文明の遺跡チチェン・イッツァのような遺跡群のみたいだ。


入り口と思われる場所にはブーツのような足跡が残っていた。

おそらくミスティさんの足跡だろう、中に入っていくものはあるが外に出てきた様子はない。


「ミスティさん達は中にいるかもしれない、見に行こうか」

ルーネに話しかけると、「ウォフ」と返事が返ってくる。


入り口と思われる石柱が並んでいる場所を進んでいくと開けた場所にでる。

奥の方にはマヤ文明形式のピラミッドがあり、その手前には何個か建物がある。


「確かにすごいな、こんな綺麗に石を積み上げている建物どうやって作ったんだろう」

地球にも多種多様な遺跡があったが、実際に見たことがあるのは古墳くらいだっただろうか、そんなことを考えながらワクワクしている自分がいた。


「さて、どこにミスティさんはいるんだろう、ルーネ匂いとか追えたりしない?」


「ガウゥゥゥ」と首を横に振る、何やら他の臭いが混ざり追えないらしい。


「そんな気にしないでいいよ、なら観光がてら色々歩き回って確かめようか!」

アルージェは遺跡の中を歩きまわり、ミスティさんを探すことにする。


少し歩き回り遺跡を見回たすが少し違和感を感じ始める。

「そういえばこの遺跡、魔物とか住んでないのか?建造物には魔物は住み着いたりしないのかな」


そう魔物が一匹もいないのである、魔物がいたような痕跡はあるのだが、実際に一匹も見ていない。

それに地面がところどころクレーター状に凹んでいたり、自然にできたものではなさそうである。


「急いでミスティさんを探そう、なんかここ変だ」

ルーネと観光気分でゆっくりと見ながら移動してたが、ルーネに跨り、すぐにミスティを探すことにする。


ルーネに乗せてもらい探していると、トラウマが頭によぎる。

昔、森で嗅いだことのある鉄のような臭いが強くなる。


「ルーネ!これもしかして!」

「ガウ!」

ルーネの反応でアルージェは確信を持つ、この臭いは血の臭いだと。


「ミスティさん!!!」

アルージェは名前を叫び、ルーネは先ほどより早く駆け、ミスティさんを探し始める。


名前を叫びながら初めに見えていた、マヤのピラミッドのような建造物に近づくと女性が二人立っているのが見えた。


「大丈夫ですか!」

アルージェが叫びながら近づくと、メイドのような格好をした女性が前に出て近づいてくるアルージェ達をメイドが制する。

「離れてください」


動きを止めたアルージェ達を見ながら「何者ですか」とメイドは問いかける。


そのメイドが着ている服には何かが飛び散ったような赤黒い汚れがついている。


「こ、こんにちは、アルージェと言います」とまずは名乗る。

そして奥にいる女性をみて、ブレイブライン辺境伯から聞いていた装いと一致することを確認して、

「ミスティさんで間違い無いでしょうか」と確認するとメイドは奥にいる女性を見て、女性が頷く。

「その通りです、何か御用でしょうか」


アイテムボックスに手を入れるとメイドが構えるがすぐに手を出して

「ブレイブライン辺境伯様から荷物を預かっています」と木箱を出すとメイドも構えを解き、

ミスティさんの方を見ると、ミスティさんがこちらに近づいてきて、木箱を受け取る。


そして、箱を開けて中身を確認したところで「ありがとう助かったわ、何かいるものはあるかしら」と確認する。

非常に心地の良い澄んだ声だった。

目を合わせて僕は

「あっ、サインだけお願いしてもいいですか、辺境伯様にもわかるようなものでお願いします」

そういうと、ミスティはアルージェの持っている紙にサインをする。


「ありがとうございます!」

アルージェがそういうと、遺跡の奥に見えるピラミッドのような建造物に進もうとミスティは背を向ける。


「あっ!」

アルージェが声を出すと、ミスティは振り向き、「まだ何か?」と聞く。


「あっ、いえ、ここにくる時、酷く血の臭いがしました、危険な何かがいるかもしれません、ミスティさん達も気をつけてください、もしあれなら一度村に戻ることも検討していただいた方がいいかもしれません」

アルージェが真剣な表情でミスティへ訴えると、ミスティは少し驚いた顔をする。


そして、少し微笑み、また無表情に戻る

「心配してくれたんだね、ありがとう」そういいそのまま奥に進む


「もっと早く君みたいな人と出会いたかった」とぼそっと呟くがアルージェには聞こえない。


奥に進むミスティ達の背中を見送る。


僕はあの目を知っている。

もう失うものはなくただ前に進むしかできなくなった悲しみの目を

「まぁいいか、ルーネ依頼は完了したし一旦村に戻ろうか」


少しミスティさん達が心配だが、あの血の臭いも不安なので、ルーネに跨り、駆け足で戻ることにした。


帰り道、血の臭いが酷い場所をまた通る。

「やっぱり、血の匂いがすごいな、一体何があったんだ、少しだけ見ていこうか」

アルージェがそういうとルーネも頷き、横道に逸れる。


そして、開けた場所に出ると大量の血が辺り一帯に付着している場所を見つける。


「ここか」


アルージェがルーネから降りようとするが、ルーネが急に動き出す。


「うわっ!危ないじゃないか!急に動いたら!」


だが、そんなこともお構いなくルーネが前を見ろと顔をちょいちょいと動かす。


前を見ると、アルージェは言葉を失った。

この辺りにいたであろう魔物達が死んでいた。


ただ死んでいただけではない。

全て何かに大きなもの押し潰されて、血が飛び散っている。

それにほとんどが圧死したのか顔や体の一部が潰されていたり内臓が飛び出した死体などがそこら中一帯に落ちていた。


「今日は肉食べられそうに無いかも・・・・・・」

こんな時でもご飯の話かよとルーネはやれやれと首を振る。


「ミスティさん達本当に大丈夫だろうか、でもこんなの僕でもどうにかできそうにないし、村の人に知らせた方がいいかもしれない、早く村に戻ろう」



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