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第四十三話

「この箱を娘に届けてもらいたい、ただし中身を見ないでほしい」


中身を見られてしまうかもしれないリスクを負ってまでわざわざギルドに来てまで依頼することなのかとも思ったが、

何か事情があるのだろうか。


「依頼内容は理解しました、何点か質問してもいいですか?」


「あぁ、構わないよ」


「ありがとうございます、何個かあります、まず娘さんの特徴と今いる場所はどこですか?」


「特徴か髪色は私に似ている群青色とでも言ったらいいのかな、それにかなり長い、目の色は赤色、服装だが」そこですこし言い淀み

「体のラインがよくわかるピッタリと張り付いたような服を着ていることが多い、後どこで手に入れたのかはわからないが、不気味な色の短剣を持っている

それに使用人の一人と常に共に行動しているのでそれも特徴になるだろうか、

最後に場所だが、ここから国境の方へ三日ほどいった場所にある遺跡は知っているかね?」


「いえ、勉強不足ですいません、この町に来たばかりで」


「いや、構わんよ、私もあまり知らないからね、その遺跡の名前は確かヴァプンコヌングルだったかな、その遺跡の近くに村があるんだが、そこに娘はいる」


ルーネの方をみて、問題ないか確認するとルーネはコクリと首を縦に振った。


「三日くらいの距離ということは、それより早く届けてほしいということでしょうか?」


「早ければ助かるが日数はあまり気にしていない、娘はおそらくまだ一月以上は遺跡にいるだろうからね、確実に娘に届けてくれればそれでいい」


「わかりました、最後に一つ、答えられないのであれば答えなくても問題無いのですが、少し疑問に思ってしまったので聞かせていただきたいです」


「なにかな?」


「中身を見られるリスクがあるのに、なぜわざわざギルドに頼むんですか?」


「・・・・・っ」

ブレイブライン辺境伯は言葉に詰まる。

アルージェも余計なことを聞いてしまったかと焦りが出る。


「すいません、余計なことを言いました、忘れてください」


「いや、いいんだ、気にしないでくれ、言いにくいんだがここだけの話」

少し溜めが入り「実は私は娘に嫌われていてね」


「情けない理由だよ、小さい時から嫌われているんだ、きっと二度とまともに会話できることはないのだと諦めている

だが私は娘を愛しているんだ、だから娘の望んだことは全て叶えてあげたいと思っている、

今回の依頼の品もかなり昔に頼まれていたものでね、ようやく手に入れることができたんだ、だから確実に届けてほしい、情けない父の代わりに頼んだよアルージェ君」


ブレイブライン辺境伯は立ち上がり、腰を九十度に曲げ、お辞儀をした。


その様子にギルドマスターは驚き、アルージェは立ち上がり「そんなやめてください!」と慌てだす。


「私の本気度わかってもらえたかな?それほど大切な品なんだ」


「絶対に届けます!絶対に届けますから!」


「ありがとう、頼んだよ、それと娘の名前を伝え忘れていたね名前はミスティ」


「ミスティさんですね、わかりました早速準備してきます、ギルドマスター他に何か注意事項などありますか?」


「いや、大丈夫だ、準備ができたら、またギルドに戻ってきてくれ」


「はい!ルーネ行こう!」


「ワフッ!」


アルージェ達はまず宿屋に戻り、状況の説明をカティさんにすると「店主に相談してきます」と厨房に向かい少しすると戻ってきた。


「まず、部屋代金は通常の半額いただければ、アルージェさん達の部屋はそのまま置いといてくださるそうですがどうしますか?」


「ならお願いします、おそらく十日くらいで戻ってくると思います」

そう言って五日分の宿代を渡す。


「アルージェさん、無事に戻ってきてくださいね」


「勿論です!ルーネもいるので大丈夫ですよ!店主さんもありがとうございます!」


いつも通り厨房の扉から握り拳が現れて、親指が天に突き立てられる。


「んじゃ!行ってきます!」


「はい、元気なお二人が戻ってくるのをお待ちしております」


宿屋をでて、町を回って必要なものを揃えて、アイテムボックスに入れて用意ができた。


ギルドに向かい受注処理をしてもらう。


「アルージェ君、気をつけてね、道が通っているからって町の外には変わりないからね」

フィーネが今回受注処理をしてくれる。


そういえばフィーネさんはいつの間にか固い話し方からだいぶ柔らかい話し方に変わったな。


「大丈夫ですよ!ルーネと一緒だし、ルーネなら普通よりも早く到着してくれるはず」

ルーネをみると、胸を張って余裕だぜをいう表情をしている。


「終わったらすぐにちゃんと帰ってくるのよ?寄り道とかしちゃダメだからね?」

「え?あ、はい、その予定ですけど・・・」


「アルージェ君は偉いわね!ちゃんと帰ってきたら遠出祝いでお姉ちゃんと一緒にご飯いこうね?」

「おぉ!フィーネさんと一緒にご飯ですか!いいですね!おすすめのとことかあるんですか?」

遠出祝いとはと思いながらも、村を出てからルーネと一緒にご飯を食べることは多かったが、

人と食べることはなかったので、久しぶりで嬉しかった。


「受付している女子の間で流行っている場所なんだけどね、みんな美味しいって言ってるから実際に食べに行ってみたんだけどすごく美味しかったから期待しててね、もちろんルーネちゃんも一緒に入れるように頼んどくからルーネちゃんも一緒にいきましょうね??」


「バウッ!」


「はい、これで受注処理も終わり、これが今回の依頼の品ね」

そういうとフィーネさんは小さな木箱を取り出し、僕がアイテムボックスになおす。


「そして今回の依頼内容ですが、そちらの木箱をヴァプンコヌングル遺跡付近にいるブレイブライン辺境伯の娘さんミスティ・ブレイブラインさんに確実に届けることです、受け渡しができれば、サインか何かを貰ってきてください、達成報酬は金貨五枚です、何か質問はありますか?」

「ないです」アルージェが問題ないと頷くとルーネも「バウッ」と頷いた。


「では、道中気をつけてください」

そこで一旦言葉区切り、続けて「あと帰ってきたらご飯行くことも忘れないようにね」

とフィーネはウィンクした。


「はい!それじゃあルーネ行こうか」

ギルドをでて、ルーネに跨りまずはヴァプンコヌングル遺跡の付近にある村を目指す。


道中はルーネに最速で駆け抜けてもらい、特に何事もなく村付近に到着する。

しいていうのであれば、ルーネが早すぎて、風情も何もなかったことくらいか、大人でも三日かかる距離だったが、

ルーネのおかげで二日目の昼過ぎには到着していた。


「ルーネほんとにすごいね、まさかもう着くとは思わなかったよ」

頭を撫でながらいうと、ルーネはいつものようにただ気持ちよさそうに撫でられていた。


「流石に目の前にいきなり大きな狼が現れたら驚くだろうから、この辺から徒歩で行こうか」

十分ほど歩くと到着する距離でルーネに降ろしてもらい徒歩で行く。


辺境の村だとは聞いていたけど簡易的な門や、堀、物見櫓があり魔物などが時々来ることが伺えた。


「うわっ、でか!?」

門の近くまでくると門番をしている青年が背中に背負っていた槍を手に持ち近づいてくる。

遠くから見るとルーネだけが見えたが、アルージェがいることを確認して剣を収める。


「こんにちは、荷物を運ぶ依頼を受けていてこの村にきました、こちらに辺境伯の娘さんいらっしゃいませんか?」


「えっ、あぁ、最近綺麗な人が来てた気がするな、村長のところだと思うけど」と青年は答える。

「中って入ってもいいですか?」アルージェは念の為、確認する。


青年はルーネを見て「村長に確認くるからそこで待ってて!」と村の中に走っていく。


青年の動きはあまり戦いに慣れた動きではなさそうだったな、

才能を隠しているだけの可能性もあるけど、おそらく魔物はそこまで現れないんだろう。

堀を見てもそこまで血の汚れなんかはないし、昔は使っていたのかもしれないけど今は安定しているけど、

念の為に門番がいるくらいなんだろうな、物見櫓の人も暇そうに欠伸をしてるしと勝手な推測をしていると、

奥から青年と村長らしき人物が近づいてくる。


「確かにヤーロの言う通り大きな大きな狼じゃな」

「だろ?なんで信じてくれないかな、じいちゃんは」

「お前がでかい魔物を見たというから若いもん連れて見に行ったら可愛らしいウサギだったじゃろがい」


「もう、そんな小さい時のこと忘れろよー!」


「あっ、アルージェって言います、辺境伯に頼まれて娘さんに荷物を持ってきたんですけど・・・・・・」


「あぁ、そうじゃったな、実はここまで来てもらって悪いんじゃが今村にはおらんのじゃ、来た初日は村にいたんじゃがな、それ以降はずっとヴァプンコヌングル遺跡に入り浸りじゃ、馬車だけワシの家に停めてな、貴族様の考えることはよくわからん、急ぎなら遺跡の方に行くほうがいいじゃろな、ワシらにもいつ戻ってくる変わらん」


村長の後ろを見ると確かにこの開拓村にはふさわしくない豪華な馬車が停まっていた。


「わかりました! なら遺跡の方に行ってみます!」


「そうすると良いヴァプンコヌングル遺跡は歴史的建造物で、見どころのある遺跡じゃからな!あの山の方へ少し進むと見えてくるだろう」

目指すべき山を指して教えてくれる。


「分かりました!ありがとうございます!ルーネ!行こ!」

ルーネに跨り、ヴァプンコヌングル遺跡を目指す。


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