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第三十六話

アルージェはベッドの上で目を覚ます。

起き上がり伸びをして、ベッドの横で寝ているルーネに視線を移す。

ルーネは猫の様にしっかり丸まって寝ていた。

日本にいた時は犬をかったことないけど、犬も丸まって寝るんだな


昨日はあれからルーネと一緒にレストランを探した。

けど狼NGというか獣を同席させるのは難しいらしく、結局一人と一匹でブラブラと歩いていた。

最終的には屋台で色々と買って済ませた。


町の色々なところに行けたし、あれはあれで楽しかった。

ただルーネは少し申し訳なさそうにしてた。

普通に考えて飯屋にペットは連れて行けないよね。

日本でも当たり前のことだった。

少し考えればわかることなんだけど、テンションが上がりすぎていて気付けなかった僕が悪い。


いつかは一緒に入ることができるレストランも見つかるだろう。


そんなわけで今日からお金を稼がないといけないんだけど、お金を稼ぐ方法が何種類かあると考えている。


まず一つ目が村を出る時にもらったアイテムボックスに入っている物を売る方法だ。


今持っている武器は作り方を覚えているから、施設と素材さえ揃えば簡単に揃えることができる。

一番楽にお金を稼げるんじゃないかと思うが、これは無しかなというか最終手段にしたい。


二つ目に鍛冶屋の手伝いみたいな感じでお金を稼ぐ方法。

これは少し難しいかもしれない。

赤の他人を手伝いとして雇うことなんて普通はないから、弟子入りみたいな感じになる可能性が高い。

弟子入りしてしまったら恐らく師匠の時みたいに簡単には辞めることはできないだろう。

師匠はグレンデ師匠だけだ。

他の人に弟子入りするのは遠慮したい。


三つ目は弟子入りは難しいので、いっそのこと自分の好き勝手に出来る店を始めること。

これは今持っている武器を売ったりしても金銭的にだいぶ厳しいと考えている。

施設を揃えるとか素材の仕入れ先をどうするとか難しいことが目に見えている。

そういうコネが全くないので、手探りで始めることになる。

もしも失敗したら多額の借金を抱えて、僕はシェリーを探すこともなく村に帰ることになるだろう。


四つ目は施設を使わせてもらえる鍛冶屋を探して、武器を作らせてもらってそれを売る方法。

そんな都合よく施設を使わせてくれるところなんてないから無理だ。


最後にギルドで普通に依頼をうけてコツコツと稼いで行く方法。

今考えられる選択肢の中でで一番堅実なやり方である。

何よりギルドでの評価が上がれば依頼金も増えてくるし、多分これが一番だろう。

僕は冒険者になるためにこの町に来たのだから。

これ以外選択肢はないんじゃなかろうか。


考えがまとまったところでギルド向かう事にする。


アルージェはベッドから立ち上がり、ルーネの近くに移動する。

そのままルーネの頭を撫でると、ルーネは体を起こしてこちらを見る。


「ルーネ。今からギルドに行って、お金稼いでくるけど一緒に来てくれる?」


「ウォウ!」

アルージェが質問するとルーネは立ち上がり返事をする。


「よーし!じゃあちょっと用意するから待ってね!」

アルージェは急いで準備をして部屋を出る。


「とりあえず、ご飯食べてから行こうか!」


「ヴォウ!」


階段を降りて一階の受付前にあるご飯スペースに座り、受付にいる昨日対応してくれた女性に声をかける。

「すいませーん。朝ごはんお願いしまーす」


「すぐに準備しますので、お待ちください」

女性は厨房の方へ行って、少しするとまた受付に戻っていった。


「そういえばお姉さんのお名前聞いてもいいですか?」

暇だったので、受付に戻ってきた女性に話しかける。


受付の女性も今はそこまで忙しくないのか、アルージェの方を向く。

「名前ですか?気になりますか?」


「えっ、あ、はい」

普通に名乗られると思っていたので、アルージェは少し面を食らってしまう。


「ご自身で話を振ってきたのにあまり興味なさそうですね」


「えっ、いやそんなことないです。めっちゃ気になります!だよね、ルーネ?」

これはまずいと思いアルージェはルーネにも同意を求める。

ルーネはやれやれという感じで首を横に振り、一肌脱いでやるかと元気よく返事をした。


「ほら!僕だけじゃなくて、ルーネも気になるみたいです!」


「今回は賢いルーネさんのフォローに助けられましたね。私の名前はカティですよ。これからもよろしくお願いしますね」


「カティさん!いい名前ですね!こちらこそ長い付き合いになると思いますので、よろしくおねがいします!」

アルージェは少し大袈裟にリアクションをとって答える。


「初めて見た時、アルージェさんはただの小さい子供だと思ってましたが、話してみるとあまり年相応という感じではないですね」


「えっ、いや、そんなことないですよ。こう見えて村にいるときは森に行ってカブトムシとかよく取ってました本当です!」

アルージェは転生者というのがバレたかと思い、慌てて子供らしさをアピールする。


「カブトムシ・・・?えっ、カブトムシですか・・・?」

アルージェは咄嗟に子供らしさを出そうとカブトムシと言ったが、カブトムシがこの世界にいないかった場合何を言っているか意味不明だろう。

普通に固有名詞を出したのは失敗したかもと、内心バクバクだったが、タイミング良く厨房側からカティを呼ぶ声が聞こえる。


「カティ!料理できたから取りに来てくれないか」と聞こえる。


「はい、ただいま」

カティは会話の途中だが、厨房に向かい料理を取りに行く。


カティが厨房に行ったことを確認すると、ルーネにコソコソと話しかける。

「カブトムシって知ってるよね?」


「バウ」

ルーネは首を縦に振り頷き返事をする。


「やっぱり居るよねなんで、あんな変な反応だったんだろ」

アルージェが考え込もうとしたところカティが料理を持って戻ってくる。


机の上に置かれたのは結構な量の料理だった。


「えっ、なんか多くないですか?」

アルージェは出された料理の量に驚き、カティに確認する


「子供はいっぱい食べろと店主の意向です。あとルーネさんの分も入ってるみたいですよ」

アルージェ達はカティからありがたい返事をもらう。


「店主さん!ありがとうございます!!」

厨房側に聞こえるかどうかはわからなかったが、アルージェは大声で感謝を述べる。


厨房までアルージェの声が届いたのだろう、厨房の入り口から握りこぶしが出てきて、親指だけ突き上げられた。

ポップな効果音が聞こえてきそうなコミカルな動きである。


「店主は少し照れ屋なので、あんな感じですが。子供が好きなのでアルージェさんには少し甘いみたいですね」

店主のご厚意で出てきた結構な量の料理をルーネと一緒に完食した。


「ごちそうさまでした!では、いってきます!」

アルージェは受付に立っているカティに向かって言う。


「いってらっしゃいませ。おかえりをお待ちしております」

カティは日本でもなかなかお目に掛かることが出来ない程の綺麗なお辞儀を返す。


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