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第六話

「す、すげぇ!」

アルージェは目を輝かせる。


木人に刺さっている矢を見てからロイの顔を見た。




「へへへ、まぁこんな感じだ!」
ロイは腰に手を当て、鼻高々に言う。



「まぁ、木人に刺さるほどの威力を出すには、俺が使ってる弓くらいの威力が無いと厳しいがな。これは俺のお手製で動物の腱やら何やらを色々使って、引く力を強くしている弓だ。威力は高いが、アルにはまだ早い」


そういうと別の場所から木製のショートボウを取り出す。




「初めはこれからだな」


ショートボウをアルージェに渡す。



「的もこの柔らかいやつからだ」
木人の隣に藁で出来た的を持って行った。




「よし!じゃあ練習するか!まずはさっき俺がやったみたいに構えてみてくれ。弦を弾くのは剣術の訓練で体作りしているから大丈夫だとは思うが、厳しかったら言ってくれ。調整する」



アルージェは見様見真似で弓をつがえて、藁の的に放つ。

だが、的の横を通り抜けて奥にあった花壇に矢が刺さる。



「おぉ、初めてでちゃんと飛ばせるだけすげぇよ。狙いのつけ方は徐々にだな。よし、もっとやってみるか」




その後も何度も的を狙って矢を放つ。

藁の的に少しずつ近づいていくが、なかなか的に刺さらず、奥の花壇に矢が溜まっていく。




「ロイ、ちょっといいかしら?」



そこにソフィアがやってきて、ロイを呼ぶ。




「おっ、ソフィア!アル坊すげぇぞ!的には当たらんがちゃんと矢を飛ばせるんだ!これは将来楽しみだ。ガハハハ!」




「そう、それはよかったわ。でも、あなたがその将来を見ることができるかしら?」




「えっ?どうしたソフィア?なんで目が笑ってないんだ?」




「あら、お気づきではないですか」




ロイが慌てて周りを見渡し、そして矢が何本も刺さっている花壇に気付く。



「う・・・、げぇ・・・、これは・・・、ア、アル坊がすげぇから熱中しすぎちゃったかなぁ。なーんて・・・、ハ、ハハハ」



自分の頭に手をやりごまかそうとするが、その手をソフィアに掴まれ家の方へ引きづられて行く。




「アル坊すまん!今日は解散!」

ロイは引きづられていない方の手を顔前に持ってきて謝る。



その日、村中に誰かの叫び声が響き渡ったとか渡ってないとか。




翌日、朝からシェリーと一緒に基礎のトレーニングをしていて一区切りついたので休憩していた。

昨日は弓の練習が不完全燃焼な感じで終わってしまった。

なのでもう少し練習したいと思い、基礎訓が終わった時にフリードに尋ねた。


「ねぇ、父さん。今日もシェリーの家に行ってもいい??」


「ん?いいぞ!」
あっさりと許可が下りた。


「実は昨日途中で・・・・?あれいいの?」

あまりにもあっさり許可が下りたので不思議に思う。


「昨日ロイが何かやらかしたせいで途中になってるんだろ?なんとなく想像はつくさ!」

「パパ、昨日ママに色々されてた・・・」

シェリーは昨日のことを思い出して、腕を自分の体に当ててブルブルと震えている。




「ありがとう父さん!明日はまた剣の打ち込みするから!」


「おう!頑張ってこい!」


「シェリーも一緒に帰る?」


「うん!」

シェリーも戻るようなので一緒にシェリーの家に向かう。




「シェリーは、弓の訓練しないの??」


アルージェは気になったのでシェリーに聞いた。



「んー、私は狙うの苦手みたーい!アルみたいにまっすぐ飛ばないんだよー!」


弓をつがえる構えをして、弓を放つ真似をした。



「へろへろーって飛んでいくの!へろへろーって!もしかしたら基礎トレーニング一緒にしてるからもうできるかもだけど、私は剣のほうが好きー!アルのお母さんとやってるの楽しいんだよー」


ニヘラーと笑いながらシェリーはアルージェに言った。



「そうなんだー、僕は弓も剣の好きだなぁ二個ともやってたらシェリーのこと守れる気がするし!」


シェリーはキョトンとして顔を真っ赤にする。


シェリーの家に到着する。

「あら?シェリーおかえりなさい、どうしたの?そんなに顔赤くなって?風邪ひいたから早く帰ってきちゃった?」



「ち、違う!アルのせい!アルが悪いの!」




「えぇ、僕、何もしてないよー!」




「知らない!!」

シェリーは顔を背けて家の中に走って行ってしまった。




「あら、シェリーったら、フフフ、それでアル君今日はどうしたの?」




「昨日、途中で終わっちゃったんで、弓の続き練習したいんですけど・・・」



「ロイなら今は納屋にいるわよー。会いに行ってらっしゃい」




「はい!」


スタコラと納屋のほうへ移動した。



横目でチラッと見えたが、昨日、矢だらけになっていた花壇は別の場所に移動されていた。

納屋に近づくにつれて血の匂いがしてきた。



「こ、こんにちはー!」




手に血が大量についたロイが顔を出して、
「お!アル坊よく来たな!昨日はすまなかったなぁ途中になっちまって」
と言う。


ロイの顔をよく見ると何やらひっかき傷のようなものがついていた。


「か、顔に傷が……」
アルージェは慌てて指摘する。



「あぁ、これは気にすんな昨日ソフィアにちょっとな、ハハハ」




「あっ、そうなんだ・・・、痛そう・・・」




「まぁ気にすんな!今日も弓やりに来たんだろ?ちょっとこれ終わるまで待ってくれや!」




「はい!」



動物を解体している様子を見ながら終わるのを待った。




ロイは水の初級魔法『水球ウォーターボール』で手を洗い終えて、アルージェの方へ寄る。


「よし、ならやるか!と言っても昨日の続きだともう後は練習しかねぇな。まっすぐ飛ばせはするし、昨日だいぶ的に近くなっていってたし。ほらよ、昨日の使ってた弓だ」




「はい!」



そして矢をつがえて、的に当てる練習をして時間が経った。


「えい!」


放った矢が的に当たるようになってきた。




それからも何度も何度も矢をつがえ放つ徐々に中心に近づく。

「おっと、そこまでだ、そろそろ終わりにするか!」
ロイからの制止が入る。




「えっ、もうちょっとで真ん中に当たりそうなんだよ!あとちょっとだけ!」
アルージェはロイに様子を見てもらいながら色々と指摘してもらって、だいぶ良くなってコツをつかんできたところだった。



「いやだめだ、指を見てみろ」

アルージェは自分の手を見る。

気付いていなかったが指から血が出ていた。


「自分で気付くかと思ったが全く気にもしないで、打ち続けるから流石にびっくりしたぜ。アル坊は夢中になって自分の世界に入ると出て来れなくなるようだな。そういうやつ嫌いじゃねぇが、まだまだアル坊は子供だ。今日のところは帰んな。サーシャさんにまで怒られちまうぜ。ダハハハハ」
ロイは豪快に笑う。


そして今日は解散となった。

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