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5-1 文化祭だよ 全員集合

夏休みが終わった。

夏休み中に姫川さんのお誕生日があったのだが、ちょっとした行き違いでお祝いするタイミングを逸してしまったのは残念だ。


姫川さんと折笠さんはふたりきりでお祝いしたらしい。やっぱりこのふたりの間には誰にも入り込めない絆がある。


二学期がはじまった。九月には中秋の名月がある。土星と木星も見ごろだ。なんだかんだいって天文部としての活動も行っていた。


わたしこと鳴海千尋は天文部ミーティングに参加していた。


ホワイトボードの前に立っているのは部長の姫川さん。わたしの隣に座っているのが副部長の折笠さん。そして一年生の村雨さん。


「さ~て、来週の天文部は? 『護国寺先生、ひかりちゃんに告白』『村雨さん、恋のさや当て』『折笠さん、ダイエットに挑戦』の三本で~す! 来週もまた見てね!」


ホワイトボードのまえで姫川さんが小芝居をする。一同固唾を飲んで見守った。

姫川さんはニコニコしている。ん?


「いつ止めてくれるの! みんなのこと信じてたのに! あなたたちはお笑い学校落第です!」

姫川さんはわたしたちの塩対応に涙目で怒りだした。


「自主退学します」

「お姉さまの愛のムチ、痛かったです」


「ヒメ。ダイエットって、わたしが太ってるっていうのか? え?」


「チガウヨ」


「このペースじゃミーティング終わらないわ。本題に入りなさい」


「さてと、つかみはこれくらいでいいでしょう」


「つかみなんて要らないでしょうが」


「いまは九月。来月には文化祭があります。そのあと二年生は修学旅行。一一月にはGEBO。申し込みはもう済ませてある。メンバーはまだ五人集まってないけどGEBOは個人戦だから問題ない」


GEBOゲボとは一一月に行われる出版社主催の国内最大の格闘ゲーム大会。

わたしたちがやりこんでいる格闘ゲーム『メディウム・オブ・ダークネス』(通称MOD)も種目に選ばれている。


MOD以外にも公式種目として有名メーカーの格闘ゲームが選ばれているが、わたしたちが出場するのはMODだけだ。


選ばれたゲームのなかではMODが一番ニッチなタイトルだった。


ライトノベル『セカイが壊れるオトがする-Medium of Darkness-』原作の同人格闘ゲームからスタートしたMODは完成度の高さから徐々にユーザーを獲得。


大手メーカーが目をつけてブラッシュアップしたものを家庭用ゲーム機に移植した。

もとが同人だけあって通信対戦ができないのが多くのユーザーの不満点だったが大型アップデートでオンラインに対応しGEBOのタイトルのひとつに選ばれた。


ゲームの大会にはGEBOのほかに有名な世界大会もあるが、MODは種目として選ばれていない。


MODはアジア圏では一部で熱狂的な人気があるが、ヨーロッパ、北米などではプレイ人口が極端に少なく、認知度が低いことが原因である。


「そういえば原作小説読んだことある人いる?」

姫川さんが一同を見渡す。


「わたしありますよ」

わたしこと鳴海千尋は手をあげた。


「あの話って、現代日本人の女の子が魔王と契約して世界を滅ぼした三一世紀のお話なんだよ」

姫川さんは小説のクライマックス部分の真相を話してしまった。


「ネタバレじゃないの」

折笠さんがあきれていた。


つづく



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