初の中編である第四章もこの回で終わりである。
鳳女子茶道部とコトジョ天文部対抗試合も滞りなく終了し、天体観測は大成功に終わった。
そしてわたしこと鳴海千尋は格闘ゲームの天才だった。ほんとか?
それはいいとしてわたしたちはいま温泉宿で朝風呂に入ろうとしている。
鳳女子茶道部部長九条沙織さんのお父さんが経営する宿に御厚意で招待されたのだ。
鳳女子天文部のみんなに別れの挨拶をして宿に移動した。なんと! 九条さんのお父さんがわざわざ車で学園の前まで迎えに来てくれたのだ! なんて良い人だろう。せっかくだからということで九条さんたち鳳女子茶道部組も同行した。
夜通しの天体観測でみんな疲れている。宿に着くとさっそく温泉に向かった。
みんなで脱衣所に入る。
「じゃあ入ろうかね」
姫川さんが上着を脱ぐ。下着もあっという間に剥ぐ。良い脱ぎっぷりだなあ。
スリム体形でむだなお肉がまったくなかった。ロシア人クォーターなのにバストは日本人の平均である。
「ヒメ。ちょっとは隠しなさいよ」
折笠さんが苦笑いする。
「お姉さま、綺麗です」
村雨さんが感動で目を拭いながら姫川さんの裸を観る。
「そこっ! その反応はおかしい」
姫川さんもタジタジである。
みんな裸になった。
折笠さんのお胸が豊満で眼を見張ってしまう。彼女はセクシー女優並みの体形をしていた。折笠さんは巨乳、姫川さんは美乳、村雨さんは微乳。全員のおっぱいをチェックしているわたしっていったい……
九条沙織さんは黒い下着をつけていた。彼女のお胸は姫川さんと同じくらい。このふたりの裸体は生きた彫刻のような造形美があり、体形でもライバルといえそうだ。
七瀬
二ノ宮
村雨さんはタオルであそこを隠しながらお胸を左手で隠している。恥ずかしがり屋だな。はじめての浴場でけがをしないよう眼鏡はかけたまま。
「わたしの体形見て笑わないでくださいね」
わたしこと鳴海千尋はふくよかな体形している。恥ずかしかった。胸は大きいけど太っているからだと思う。
でもからかう人は誰もいなかった。
入り口の扉を開けて入浴場へ。温泉独特の硫黄臭が充満している。
「湯船につかる前に体を流してくださいまし。髪は湯船につけないように」
九条さんが仕切る。
「は~い」
わたしは折笠さんの体形が羨ましくてちらちらと見てしまった。
「なに?」
「おムネ大きいと男子にモテるって本当ですか」
「ふっ。発情したおサルさんみたいな男子が寄ってくるわね。だからわたしは女子校を選んだ」
折笠さんは遠い目をした。
「鳴海さんだってバスト大きいじゃない」
「わたしはデブなだけですよ」
「自分のことデブなんていうのやめなさいよ。わたしは鳴海さんのこと可愛いと思っているわよ」
「本当ですか?」
「本当、ほんとう」
わたしは折笠さんに微笑んだ。
「お姉さまの生まれたままの姿、綺麗です。わたくしは今日死んでもいい……! はあはあ……お姉さま、こちらへ」村雨さんは姫川さんの裸体を凝視している。
「
(※ロシア語でエッチ! 近寄らないで)
姫川さんが村雨さんの視線に怯えている。
彼女は姫川さんの裸を見て興奮している! やばいよ!
この作品は全年齢対象なんだから。
興奮しすぎた村雨さんは気を失い湯船に水死体のように浮いた。
「村雨さんが死んだ!」
姫川さんの声が入浴場に反響する。
「勝手に殺すな。まだ死んでないわ!」
「折笠さんの言い方もひどいと思いますけど。彼女を運びだしましょう」
わたしが一番冷静だった。
ちょっとはやめに湯船からでたわたしたち。ラウンジでのぼせた村雨さんを介抱していると聞き覚えのある声がした。
「おまえたち。探したぞ。やっと合流できた」
その声の主は護国寺先生だった。法事が終わるなり駆けつけたが学園へのバスがなくて足止めされていたらしい。やっと学園に連絡がつくと、わたしたちが合宿を終了して温泉にいることを知って追いかけてきたのだ。
「うっしー、来ちゃったの? 無理しなくてもいいっていったのに」
護国寺先生は村雨さんをうちわであおいでいる浴衣姿のわたしたちを見て黙り込んでしまった。かすかに上気している。
「あ? もしかしてお風呂上がりのあたしたちが色っぽくてドキドキしちゃった?」
姫川さんはいじわるそうに胸元をちらつかせた。
「う、うるさい!」
合宿最後のエピソードである。
夏休み最後の週、折笠さんのご自宅に集合してGEBOのオンライン予選を受けた。
この日のために全員アカウントを取得済みだ。なんと! 天文部は全員予選突破した!