「そろそろ、休むか。」
そう言うと彼女が不安そうに頷く。
「そうですね…」
彼女はそう言って立ち上がり、俺に挨拶をする。
「おやすみなさい。」
夜半になると雨風はどんどん酷くなり、屋根に打ち付ける雨の音と家の壁や窓、雨戸に打ち付ける雨風の音が大きくなった。風が家全体にぶつかった時の衝撃音はなかなかのものだった。俺はなかなか寝付けず、厠に向かう。用を足し、厠を出て、ふと彼女の居る部屋の前で立ち止まる。中からは明かりが漏れている。
「綾乃、大丈夫か。」
声を掛けると襖が開いて彼女が現れる。薄暗い中でも彼女が怯えているのが分かる。次の瞬間、風が家に当たり、バーンと大きな音を立てる。
「やっ…」
彼女は小さな悲鳴を上げて目の前の俺に身を寄せる。俺は咄嗟に彼女を抱き留める。腕の中の彼女は少し震えている。
「大丈夫だ、大丈夫。」
そう言いながら俺は彼女の頭を撫でる。こんな状態ではきっと休まらないだろうと思い、言う。
「一緒に休むか。」
彼女を部屋に連れて来る。布団に入り、彼女に寄り添う。引っ切り無しに雨風が打ち付ける。気付けば彼女を抱き締めていた。胸が高鳴る。彼女とこんなに密着した事など無い。不埒な考えを頭の中から追い出そうと試みる。けれど密着している部分が彼女を感じ取ってしまう。彼女の手が俺の背中に回っている。彼女は怖がっているだけだ、台風が怖くて、俺はそんな彼女を保護しただけだ。ダメだ、こんな不埒な事を考えて、俺は何を考えているんだ。そう自分を戒めながらも、俺の中の欲望はどんどん膨らんでいく。これは試練だ、乗り越えなければいけない試練だ…そう思っている裏で俺は彼女の体の細さと柔らかさに気付いていた。俺の心の中で確実に育っている彼女への恋慕。大切に思うなら、彼女の気持ちを尊重しなくてはいけない。俺は腕の中の彼女を見る。彼女も俺を見上げていた。あぁ、ダメだ、もう限界だ…。彼女に口付ける。彼女の口を舌で割って舌を絡ませ合う。彼女は少しも抵抗しない。唇を離して聞く。
「良いのか?」
彼女は恥ずかしいのか、俺を見ずに言う。
「はい…」
彼女に口付ける。夢中で彼女の舌を絡め取る。
その夜は何度も彼女を抱いた。何度も絶頂に達した。何度目かの絶頂の後、俺は彼女を抱き寄せて抱き締め、息をつく。彼女は力無く俺に抱き締められている。
「大丈夫か。」
聞くと彼女が俺を見上げる。彼女はうっとりと俺を見ていた。
「そんな顔を見せるのは俺だけにしろよ。」
言うと彼女がほんの少し笑い、俺の胸に顔を埋める。
「晃さん以外とはこんな事、しません…」
そう言う彼女が愛おしい。俺は覚悟を決める。言わなければいけない。
「綾乃、」
呼ぶと彼女が俺を見上げる。とろんとしたその瞳を見つめて言う。
「一緒になろう。」
彼女は微笑んで言う。
「はい…」
彼女を抱き締める。