数分としないうちに浜辺に人が降りきて、皆、近くまで探しに来ていたようで春樹と手を振って駆けてくる。
「美羽!」
見つかったという知らせを聞いてか美羽の母が呼ぶ。赤茶毛の髪を靡かせながら走ってきた母親は、美羽を抱きしめると安堵したように息を吐いた。そんな母に美羽はごめんなさいと謝る。
「春樹くん、ありがとうね。美羽が迷惑かけちゃって……」
「いいですよ。怪我無くてよかったです」
母は何度も春樹に頭を下げて、美羽が見つかったことに皆はほっと胸を撫で下ろすと、じゃあ帰るかと宗司が声をかけたのを合図に棗が荷物を春樹に渡す。
美羽とその母は皆に頭を下げながら帰っていった。弥生や花音、宗司も戻っていくので、春樹も帰ろうとして、龍玄に呼び止められた。
「春樹、足を怪我しているだろう」
「え」
「はぁ! 春樹、大丈夫!」
龍玄が右足を指差せば、棗はあっと声を零す。春樹は頬を掻く、あと少しだったんだけどなぁと小さく呟いて。
「何、隠そうとしてるんだよ!」
「いや、これぐらいなら大丈夫だし……」
「春樹、手を見せてみろ」
龍玄はそう言って春樹の手を掴むと掌を見られる。荒い岩肌を力を籠めて掴んだからなのか、擦りむいていたり血が滲んでいた。見られてしまったと「大丈夫だよ」と春樹は慌てて手を引っ込める。
少し痛いだけで問題は無い、家に帰って消毒するからそう言えば、龍玄にそういう問題ではないと返されてしまった。
「危険なことをするべきではない。もし、何かあってしまっては遅いのだ」
「そ、そうだけど……確認しなきゃだし……」
「俺は美羽のことも心配だが、春樹も心配なんだ」
凛とした綺麗な声が低く重くなり、真剣なその眼差しに春樹は黙ってしまった。あの時は自分のことなど考えていなかった。
美羽が何処にいるのか、無事なのかそれしか考えていなくて。春樹は何も答えられず黙ったまま彼を見つめる。
「春樹が無事でよかった」
龍玄はふっと微笑むと春樹の頭を優しく撫でた。彼の優しい笑みに春樹は目が離せない。
想いの籠められた偽りのない表情を向けられて、何故か胸が高鳴った。