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4-14 必ず助けるから

 城門を抜けると、私は再び鼻を地面に押し付けてクンクンと匂いを嗅いだ。匂いは森の奥へと続いている。


「こっちね!」


 月明かりが差し込んではいるものの、森の中は木々が生い茂っている為に足元もおぼつかない暗さだ。

 本当は怖くてたまらなかったが、クロード達を心配する気持ちの方が勝っていた。野生の勘が働いているのか、嫌な予感がしてならない。何故か二人に危険が迫っているような気がする。


 大丈夫、今の私は身体も大きく、とても早く走ることが出来る。

 しかもあの、マリー・アントワネットの護衛犬としても活躍していたあの犬種なのだ。


「クンクンクン………見つけた! クロードの匂いを発見したわ!」


 私は益々深くなる森の奥目指して風のように早く駆けた。


「待っていてね! クロード!」



**


 森の中を走っていると、クロードの匂いが強くなっている。


「あっちね!」


 森の奥に崖が見える。そこにクロードがいるに違いない。


「クロード!」


 私は更に走り……足を止めた。


「!」


 驚くべきことに、そこには崖を背にしたクロードが松明を手にして二匹の狼と対峙していたのだ。彼の背後には涙を流しながらブルブル震えているコーネリアもいる。


 狼は低い唸り声を上げながら、二人を睨みつけている。恐らくクロードの手にしている松明で近づけないでいるのだろう。


「く、来るな!」


 クロードはコーネリアを庇うように松明を手にして狼たちに向けている。


「ワンワンワンワン!!」

(クロード!!」)


 相手は狼、しかも二匹もいる。けれどクロードを助けなければ!

 私は吠声を上げながら狼達に突進した。


「ガウッ!!」

「ガルルルルッ!!」


 狼達はターゲットを私に絞り、こちらへ向かって駆けてくる。


 大丈夫! 私は彼らよりも身体が大きいし、鋭い歯も生えている。


「あんたたちに負けるものですか!」


 私は地面を蹴って狼たちに飛びかかった――




 激しい戦闘が始まった。二匹の狼たちは一斉に私に飛びかかって身体に噛み付いてくる。 

 あまりの激痛に叫びたくなるが、負けてなるものか!

 激しい吠声を上げながら私も負けじと二匹の狼を相手に噛みつき、引っ掻き……必死で戦った。


 私の身体は血だらけになり、白い毛が真っ赤に染まる。


「ホワイト! ホワイト!」


 クロードが悲痛な声を上げて私を呼ぶのが聞こえてくる。その声が私の遠のきそうになる意識を呼び戻す。


 この命が尽きても……クロードを助けなければ!

 私の何処にそんな力があるのか自分でも不思議だった。二匹の狼を相手に戦っているのだから。


 その時――


「クロード様ー!!」


 馬に乗ったフットマン達が松明を手に、こちらへ向かって駆けてくる姿が目に入った。

 そして先頭を走っていたフットマンが銃を手に、空へ向かって撃つ様子が見えた。


ズガーンッ!!


 その音に驚いたのか、二匹の狼たちはビクリとすると一斉に森の奥へと逃げ出していった。


「よ、良かった……」


 クロードを守り切ることが出来た……。

 身体の痛みは限界を超えていた。立っていることも出来ない私はそのまま地面に倒れ込んでしまう。


 クロードやフットマン達が何か叫びながら私に駆け寄ってくるけれども、もう私には何も聞こえなかったし、いつの間にか身体の痛みも感じなくなっていた。


 目がかすみ、身体から血が流れ出していくのが自分でも分かった。多分、私は……もう助からないだろう。

 クロードがボロボロ泣きながら私を見つめている。


 クロード……無事で良かった……。


 結局私は人間に戻れないまま死んでしまうのね……。

 せめて……魔法使いに最期に一言、文句を言ってやりたかった……。



 そう思った矢先……私の身体が突然眩しい光に包まれた――!


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