今の私は超大型犬。
身体の細いクロードを背中に乗せて歩く位はどうってことないはずだ。
「ワンワンワンワンワンワンワン!」
(クロードを私の背中に乗せて!)
尻尾をぶんぶん振って私は3人のフットマンに訴えた。
「おい、何だって言うんだ? この犬……」
「どうやら威嚇しているわけでは無いな」
すると、ジャックが私の目をじっと見つめながら尋ねてきた。
「もしかして……クロード様を乗せろと言ってるのか?」
おおっ! 何とジャックに私の気持ちが通じた!
「ワン!」
(そうよ!)
ブンブン首を縦に振って、ついでに尻尾もフリフリする。
「そうか。よし分かった。2人とも、今すぐクロード様をこの犬の背中に乗せよう!」
ジャックは2人のフットマンを振り返った。
「え? ほ、本気なのか? ジャック!」
「そんな…‥クロード様を犬の背中に乗せるなんて……」
明らかに2人は躊躇っている。するとジャックがナイスな発言をした。
「何を言っているんだ? 馬の背中に乗せるのだって、犬の背中だって同じだろう? 今は一刻も早くクロード様をお運びしなければ!」
「あ、ああ!」
「そうだな!」
2人は頷くと、すぐにクロードは抱きかかえられて私の背中に乗せられる。
ズシッ!
クロードが私の背中に乗り、重みが身体に伝わってくる。
うう……さ、流石に少し重い……けどこれも全てクロードを助ける為。
「おい? 大丈夫か?」
ジャックが心配そうに私に尋ねてくる。何のこれしき。
「ワン!」
(もちろんよ!)
「よし、それじゃ行くぞ!」
ジャックに促され、クロードを背に乗せた私は3人のフットマンたちと一緒に部屋を目指した――
**
「よし、それじゃクロード様をベッドに寝かせよう」
「ああ」
「慎重にな」
部屋に到着すると早速私の背中からクロードが下ろされ、慎重にベッドに寝かされた。
「クロード様、すぐにお医者様を呼んで参りますからお待ちくださいね」
黒髪のフットマンは意識の無いクロードに声を掛けると、足早に部屋を出て行った。
「それじゃ俺は水を運んでくるよ。ジャック、お前はどうする?」
声を掛けられたジャックはクロードを見つめたまま返事をした。
「俺はここでクロード様を診ているよ」
「ワン!」
(私も!)
すると、何故か2人のフットマンは私を見つめる。
え……? ちょ、ちょっと何? その目は……。
「お前は出て行くんだよ」
ええっ!? 何でよ!
「ああ、具合が悪い人の側に動物は駄目だ」
ジャックまで人でなしの台詞を言う。
「そうだな、お前は廊下で待っていろ」
赤毛のフットマンが扉を指さす。おのれ……2人とも。別に部屋の隅っこでもいいからいさせてくれればいいのに。
けれどここで騒ぐわけにもいかず、私はがっくり項垂れると渋々扉へと向かった。
長い尻尾を下げながら――