「あ! その首に巻いてある黄色いリボンは……!」
クロードは私を見て目を丸くした。
「え? もしかすると…‥‥この黄色いリボンは……?」
「そうだよ、僕がその猫に巻いてあげたんだ」
アビーの言葉に頷くクロード。
「そうだったのですが……ミルクちゃんはこのリボンがとても気に入っているのですよ? お風に入れてあげるときは取ってあげているのですが、入浴後は必ずこのリボンをつけたります。ね? ミルクちゃん」
「ニャン! ニャンニャニャニャン!」
(ええ! だってクロードからのプレゼントだもの!)
「へ~…すごいな……本当に人の言葉を理解しているようだ……。それにさっきからこの部屋に猫がいるのに、少しも喘息の症状も出て来ないのだから不思議な猫だね」
クロードが私をじっと見つめる。
「クロード様、その原因はもしかすると‥‥…シャンプーのせいかもしれませんよ?」
仕事の手を動かしたままアビーが答えた。
「シャンプー?」
「はい。普通の猫はお風呂に入るのをとても嫌がるのですが、ミルクちゃんは別です。お風呂とシャンプーがとても大好きなのですよ?」
「え? ミルク? あぁ、そうか。その猫……ミルクって名前を付けたんだね?」
「はい、そうです。ミルクみたいに真っ白ですから。私達メイドで毎日交代でお世話をしているのですよ」
そしてアビーは私が一番触って貰うのが好きな場所……顔を指で撫でて来る。
う~ん。そこが一番いい場所なのよね~……。
思わず目が細くなって、喉がゴロゴロと鳴る。
「……僕も……な、撫でてみても……いいかな……?」
少しの間、クロードは私とアビーの様子を見ていたけれども躊躇いがちに声をかけてきた。
「ええ、勿論です」
頷くアビー
何? クロードが私を撫でてみたいですって!? その言葉に私の耳がぴくぴく動く。
「それじゃ、ミルクちゃん。クロード様の所へ行ってあげて?」
「ニャーン」
(いいわよ)
アビーが私をポケットから取り出し、ストンと床に降り立つとクロードの元へと歩いた。
「ニャーンニャンニャン?」
(さぁ、好きなだけ触っていいわよ?)
そして私はクロードをじっと見上げる。クロードは少しの間私を見つめていたけども、やがて私を両手で抱き上げると、椅子の上に下ろした。
「そ、それじゃ……撫でてみるよ……」
クロードは私の頭に手を乗せると――
サワサワサワ……
絶妙な力加減で撫でて来た。おおっ! 撫でるの上手じゃない!
「ナァ~ン」
気持ちが良くて、甘えた声で鳴く私。
「まぁ。クロード様。撫でるのお上手ですね? そう言えばミルクちゃんは背中を撫でられるのも好きですよ」
アビーがアドバイスする。
「せ、背中だな……? よ、よし……」
今度はクロードの手が私の背中を撫でてきた。
う~んこれも素晴らしい撫で方だ。ひょっとするとクロードはブリーダーの素質があるかもしれない……。
そんなことを思いながら、クロードの絶妙な力加減で撫でられていた私。
やがてあまりの気持ちよさに、そのまま寝落ちしてしまった――