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2−31 このタイミングで?!

 魔法使いが消えた後、私はいつものように野菜畑まで闇の中を飛んだ。


「クロード……。喘息の具合はどうなのかしら……? 誰か『シルフィー』に気付いてくれればいいのだけど……」


 バサリと近くの木の枝に舞い降りると、私は月を眺めた。満月はいつの間にか半月になっていた。


「もう、何日貴方に会えていないのかしら……。でもきっとフクロウの私のことを怒っているでしょうね……。何しろ私が白蛙を食べてしまったと思っているのだから」


ホ〜ウとため息を着くと目を閉じ、眠りに就いた――




「お〜い! 白フクロウ〜! どこにいるんだ〜い?」


 木の上で眠っていると、不意に呼ばれる声が下の方で聞こえてきた。


「え? あの声は……!」


 庭師さんだ!


「ホーゥッ!!」

(庭師さーんっ!!)


 バサリと羽を広げて地上にフワリと降り立つと、庭師さんが私に駆け寄ってきた。


「おお! 白フクロウ! 良かった……無事だったんだな? 怪我の具合はどうかい? お前さんが『シルフィー』を摘んできてくれたのだろう?」


「ホウ? ホウホウホウホウ?」

(え? シルフィーが分かったのね?)


 私はブンブン首を激しく上下に振りながら頷いた。


「やはり私の言葉が通じているのだな? お前さんが届けてくれた『シルフィー』のお陰でクロード様の喘息が治まったのだよ。今朝からはもう起き上がって、ベッドの上でお食事が取れるようになったのだよ」


『本当? クロードの喘息が治ったのね?』


「フットマンがお前さんに悪いことをしたと反省していたよ。折角クロード様の為に貴重な薬草を摘んできてくれたのに、追い払うどころか怪我をさせてしまったと。今彼は罰を受けて、謹慎処分にされているよ」


『ええ? フクロウの私を怪我させただけで謹慎処分にされてしまったの?』


「クロード様は大変お前さんに感謝していたよ。今はまだ部屋から出ることが出来ないが、明日には庭に出てこれると思う。自分の口から感謝の言葉を述べたいと話されていたのだよ」


『クロードが……?』


 私は嬉しくなり、思わず甲高い鳴き声を上げた。

そして元気になった姿のクロードがひと目見たくて、バサリと羽を広げると空を飛んだ。


「あっ! 何処へ行くんだい!? 白ふくろう!」


 庭師さんの私を呼ぶ声が聞こえる。


『大丈夫よ!窓の外からクロードの無事な姿を確認するだけだから!』


 ホウホウと鳴いて庭師さんに説明すると、私はクロードの部屋を目指した。




**



 クロードの部屋のバルコニーにフワリと下り立つと、早速私は窓の外から部屋の様子を眺めてみた。

 幸い、カーテンが開いていたので室内はよく見渡せる。


「クロード……まだベッドの上にいるのかしら?」


 窓に近付き室内を覗いてみると、ベッドの上で読書をしているクロードの姿が見えた。


「良かった……クロード。元気になれたのね」


 クロードの姿を無事確認出来たので、再び畑へ戻ろうとした時……。

 偶然にもクロードが顔を上げてこちらを見た。


 すると彼は驚いたように目を見開き、ベッドから降りるとこちらへ向かって近づいてくる。そこで私はおとなしくバルコニーで待つことにした。


「白ふくろうさん!」


 窓ガラスを開けたクロードは顔色こそまだ良くなかったけれども、全く咳き込んでいない。


「ホーウ。ホウホウホウホウホウ」

(クロード。元気になれたのね)


「フットマンから聞いたよ。君が僕の為に『シルフィー』を届けてくれたのだろう? それなのに、怪我までさせられて……大丈夫だったかい?」


 クロードは私の前にしゃがみこんだ。


『いいのよ、そんなこと気にしなくても。でも元気になれて良かったわ』


「本当にありがとう。感謝してもしきれないよ……そうだ! 今いいものを持ってきてあげるよ!ちょっとここで待っていてくれるかい?」


 クロードは私の頭を撫でると、部屋の中へと入っていった。



『何を持ってきてくれるのかしら……? またネズミだったら嫌だな……うっ!』


 突如、私の身体が熱くなった。


 こ、これは……まさか、また私の身体が変化する兆しが?


 そして……ピカッと私の身体が眩しく光り輝いた――




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