「どうすればクロードの病状を確認することが出来るのかしら……」
畑に戻って来た私は飛び回ってお腹が空いてしまったので、エネルギー補充の為にミルワームを食べながら考えた。
「ああ! もどかしい! こんな時、人間の言葉を話せたらどんなにか良かったのに! もう自分が呪いに掛けられていることを絶対に明かさないと約束する代わりに話せるようになれないかしら!」
ホウホウと憤りながらミルワームを食していると、聞き覚えのある声が真上から降って来た。
「おや? ホウホウと鳴き声が聞こえると思ったら、フクロウじゃないか? 御苦労御苦労、今日も害虫駆除をしてくれていたのかい?」
見上げると、やはり思った通りの庭師さん。
「ホーウッホウホウッ! ホウホウ? ホーウホーウホーウ?」
(ええ、当然よ! それよりねぇ? クロードの体調はどうなの?」
伝わらないと知りつつ、私はホウホウと鳴いて尋ねた。
「何だい? 餌でも欲しいの?」
「ホウ? ホーゥホーウ!」
(餌? いらないってば!)
私は慌てて首をブンブン左右に振る。
「おや? 餌じゃないのかい? しかし不思議なことだ……まるで人の言葉が分かっているようにも見えるなぁ? 何だかお前を見ていると、あの白蛙さんを思い出すよ」
「ホウホウ? ホウホウホウホウ!」
(白蛙? それは私のことよ!)
もしかして私の正体に気付いたのだろうか?
「ピィー!」
(そうよ!)
嬉しさのあまり、今までとは違う鳴き声が発せられた。え!? 何この鳴き声!
すると庭師さんが驚いたように目を丸くした。
「これは驚きだ。まさかフクロウがこんな風に鳴くなんて……。そう言えば聞いたことがあるぞ? フクロウは嬉しいときに甲高い声で鳴くことがあるって……もしや……?」
「ピィ! ピィ! ピィー!」
(そう! そう! 私よ!)
「やはり、お前さんが白蛙さんを食べてしまったのだな?」
ガクッ!!
庭師さんの言葉に思わず地面に倒れ込んでしまった。
「おい? どうしたんだね?」
私が地面に倒れたことで、慌てた様子で庭師さんが声をかけてきた。
う〜ん……これって、一応私を心配してくれているって……ことだよね?
「おっと! こうしてはいられない! クロード様に何か栄養のつく食べ物を作って差し上げないといけなかったのに、こうしてはいられない」
庭師さんは背中に背負っていたカゴを畑に下ろした。
「ホウ? ホウホウホウ?」
(え? クロードの為に?)
すると私の様子に気づいたのか庭師さんが独り言のように語りだした。
「クロード様は元々身体が丈夫じゃなくてね……おまけに喘息の持病持ちだから環境の良い場所に住むことになったのだよ。そのおかげで子供の頃よりは丈夫になったのだけど、今でも時折発作が出るのさ。だけど咳が酷いから今も食べ物を受けつけられないのだよ」
「ホー……」
(そうだったのね……)
だからクロードはベッドの上で寝ていたのか……
「ああ、こんな時に……『シルフィー』があればなぁ……」
庭師さんはため息をつきながら野菜を収穫し始めた。
シルフィー……?
一体、それは何だろう?
聞き覚えの無い名前に私は首を傾げるのだった――