クロードが私を嫌っている……?
庭師さんの言葉に乙女心? が傷つく私。
そんな……それじゃ私はこの姿のままでは二度と、クロードの前に出ることが出来ないということなのだろうか……?
一気に気分が滅入ってしまった。何だか失恋してっしまったような気分だ。
食欲だって失せてしまう。
「あぁ……何てことなの? 全くタイミングの悪いときにフクロウに変身してしまうなんて……」
ホウホウと不気味な声でため息を付きつつ、野良作業している庭師さんの背中を見つめていた。
その時――
「うわぁあ!」
庭師さんから悲鳴が上がった。え? 何があったの?
ホウホウと庭師さんに鳴いて尋ねる。
「ま、また現れたな……! この気色悪い害虫め!」
そして庭師さんが私の方を振り向いた。
「そうだ! フクロウ! この害虫を食べてくれ!」
この庭師さん……私に人の言葉が通じると思っているのだろうか? まぁ実際通じているからいいけどね。
「ホーウッ!」
(了解っ!)
一声鳴くと、私はすっかり畑に巣食う不気味なミルワームを食して回った。……最も口に入れる瞬間は目を閉じていたのは言うまでもない………。
「ホウ……ホーウホーウホウーフ……」
(ふう……お腹いっぱい……)
クロードに嫌われたショックで食欲なんか皆無だと思っていたけれども、結局私は庭師さんに命じられるまま、目に入ったミルワームを駆除して回った。
「いやぁ〜助かったよ、フクロウさん。お陰でこの畑の平和は守られた。野菜だからねぇ、下手に農薬を使うわけにはいかないし……いちいち害虫を手で取るには限界があったのだよ。しかもいつ見ても不気味だし」
庭師さんはフクロウの私にペラペラと話をしている。
(ええ、そうでしょうとも。私だってまだあの見にくい姿に耐えられないのだから。でも庭師さん。あのミルワーム、見た目と違ってとーっても美味しいんですよ? 今度騙されたと思って、食べてみて下さい)
ホウホウ鳴きながら庭師さんにアドバイスした。
「よし、それじゃ今日はこの新鮮な青菜と人参に大根を収穫して帰ろう。クロード様には新鮮な野菜を食べて頂かないとな。何しろ、クロード様は……」
え? クロードがどうかしたの?
先を聞きたいのに、何故か庭師さんはそこで言葉を切ってしまう。
麻袋に入れた野菜を担ぎ上げると、庭師さんは私を見下ろした。
「さてと、それじゃあね。フクロウさん、また害虫を見つけたら駆除しておいてくれよ」
そして庭師さんは私にくるり背を向けると、スタスタと歩き去っていく。
(嘘? 行っちゃうの? 肝心のクロードの話はどうなったのよ!)
ホウホウと鳴いて訴えてみるも、庭師さんはどんどん歩いていく。
「ホーウッ! ホウホウホウホウホーゥッ!!」
(ちょっと! まだ話は終わってないのよーっ!!)
話の続きが気になる私は必死で鳴いて訴えるも……結局庭師さんは多分城へ? 帰ってしまった。
「ホーウッ!!」
(庭師さーん!!)
いつの間にか、空には一番星が浮かんでいた――