「な、何だって……?」
クロードが私をジロリと冷たい目で見た。うぅ……まさかクロードからこんな視線を向けられるとは思いもしなかった。
「言われてみれば、このフクロウは白蛙さんが逃げていった方向から飛んできた気がする」
「ええ、クロード様。そこですよ。いいですか? フクロウは猛禽類だけあって、動物を捕食する習性を持っています。きっとこのフクロウがあの白蛙さんを食べてしまったのですよ。そうに違いありません」
「ホーゥッ! ホーウッ! ホーゥッ!」
(ちょっと! 庭師さん! 何てこと言うのよっ!)
庭師さんの頭の上をぐるぐる旋回し、私は必死で文句を言う。
「そんな……このフクロウが僕の白蛙さんを……」
クロードから「僕の白蛙さん」と言って貰えるのは嬉しいけれど、これは無い!
(クロードッ! 私があの白蛙なのよっ! お願いだから気付いてよ!)
必死でホウホウ鳴きながら訴えるも当然2人には通じない。
「ベン……その蛙は放してあげよう。あの白蛙さんでは無いのだから……」
すっかり気落ちした様子でクロードが庭師さんに声をかける。
「はい……クロード様」
庭師さんが手に持っていた蛙を地面に下ろすと、蛙はぴょんぴょん飛び跳ねながら森の方へ飛んでいった。それを黙って見つめるクロードと庭師さん。
「やっぱり……あの蛙は白蛙さんでは無かったんだね……」
「そうですね。あの蛙さんなら、花壇に棲み着いていましたからね」
そして2人は地面に下り立った私を見た。
「クロード様。このフクロウ……どうしますか?」
どうって……どうするつもり!? ま、まさか……!
一瞬、私の脳裏に調理台の上に乗せられている自分の姿がが浮かび……ブルリと身震いした。
「ベン……思ったんだけど……このフクロウを責めても仕方がないよ。自分の本能に従って、白蛙さんを食べてしまったのだから」
(だから! 食べていないってば! 私はあの白蛙なのよ!)
無駄と知りつつ、ホウホウ鳴く。
「行こう……後であの白蛙さんのお墓を作ってあげよう」
「そうですね」
(お墓なんか作らなくていいんだってば!)
しかし、2人は私に最早目も向けない。
「あ、そうだ。そのネズミも、もういらないから放してあげよう。ひょっとするとこのフクロウが餌にするかもしれないし」
え? ネズミ……? ネズミィ〜ッ!?
クロードは持っていた袋を地面に下ろすと紐をするりと解いた。
その瞬間――
「チュウッ!」
ネズミが袋から飛び出してきた。
「ホーウッ! ホウッ!」
(いやーっ! ネズミッ!)
私はバサリと羽を広げるとバサリと逃げるように森の奥へ飛んだ。
フクロウの姿に変わった自分と、ヘラヘラ笑う憎たらしい魔法使いに腹を立てながら――