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1−15 耳を疑う言葉

 あぁ……蛙ジャンプで思い切り魔法使いの顔を蹴り上げてやりたい……。


 軽い殺意を覚えながら魔法使いに抗議した。


「どうして無理なのよ!」


「それはね、そういう仕様の魔法だからさ」


 チッチッチッと人差し指を立てて左右に振る魔法使い。いちいちキザな真似をしてくるところが憎たらしい。


「一体どういう仕様なのか、分かるように説明してよ」


 そして再びケロケロと喉が鳴ってしまう。


「プッ!!」


 途端に顔を真っ赤にさせて、肩をプルプルと震わせる魔法使い。これでは少しも話が進まない。


「ちょっと! そんなに笑うならどうして私を蛙にしたのよ! どうせならもっと違う姿にしてくれれば良かったでしょう? 例えば可愛い子猫とか」


「あ〜。いきなりそれは無理だよ。以前にも言ったけど、君が人から感謝される行いをしなければ呪いが解けない魔法なんだよ。つまり、僕にも解除できない魔法ってことさ」


「は……? な、なにそれ……」


 魔法使いの言葉に耳を疑った。つまりアレだ。魔法使いは私を蛙にする呪いの魔法は掛けたけれど、自分では呪いを解除できないという何とも無責任な魔法を使ってくれたということだ。


「ちょっとぉっ!! ふっざけないでよ! 自分で解けないような魔法を勝手に使わないでよ! この無責任男っ!」


 喉をケロケロ鳴らしながら、思いきり抗議をしてみても……結局魔法使いの笑いを誘うだけだった――



「あ〜苦しかった……本当に君は楽しい蛙だね?」


 ひとしきり笑い終えた魔法使いは未だに肩をプルプル震わせている。


「全く……だったら私を蛙スタートにしなければ良かったのに。よりにもよって蛙なんて……」


「仕方ないよ。だって君を蛙の姿に変えてくれと頼んできたのは他でもない、王子なんだから。いくら僕でも権力には逆らえないよ」


 確かに小説の中では王子が魔法使いに命じてサファイアを蛙に変えていたっけ……。そこまで思い出して肝心なことに気がついた。


「そうだ、肝心なことを言ってなかった! ねぇ、信じられないかもしれないけど聞いてよ。私はねぇ、サファイアなんかじゃないの。何だか知らないけれど、小説の中のサファイアに憑依してしまった、しがないOLなのよ!」


「サファイア……」


 厚底牛乳瓶眼鏡を掛けた魔法使いの表情をうかがい知ることは出来ないけれど、その声には何故か同情が混じっている。


 そして……。


 魔法使いは私をヒョイとつまみ上げると自分の手の平に乗せた。


「ちょ! ちょっと何するのよっ!」


「可哀想に……蛙の姿にされたことで現実逃避しているんだね? でも生憎これは夢じゃない。君は偉大な魔法使いである僕によって太古の魔法で呪いに掛けられてしまった可愛そうな蛙なんだよ? だけど安心していいよ。まだ救いのチャンスはあるんだから。人に感謝してもらえればいつかはきっと人間に戻れるよ。でも1年以内に呪いを解かないと、二度と人間には戻れないからね?」


「は……?」


 魔法使いの言葉に耳を疑った――








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