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1−3 魔法使いと蛙の私

 え……? 魔法使い……?サファイアを蛙に変えた魔法使いってこと?


そして私をサファイアと呼ぶって言うことは……!!


「ケロケロッ!! ケロケロケロロロロロッ!!」

(ちょっと! 貴方の仕業なんて酷いじゃないっ!)


 私はおもいきり目の前の魔法使いに文句を言った。


 すると……。


「あ〜ごめんごめん……僕には今の君が何を言ってるのかさっぱり理解できないんだ。ケロケロと蛙の鳴き声で鳴かれてもね〜……どうやら僕の掛けた魔法が相当強力だったみたいだよ。当初の予定ではせめて人の言葉くらいは話せるようにしてあげるつもりだったのに」


 牛乳瓶底メガネでは魔法使い男の顔の表情が分かるはずも無いのだが……。どうにも私にはこの魔法使いは今の状況を面白がって笑っているようにしか見えない。


『私はサファイアじゃないのよ! はまるきり別人なの! どうか早くもとに戻してよ!』


 必死で訴えるも、魔法使いには私の言葉は通じていない。


「とにかく、君が何を言っているのかさっぱり理解できないから僕の方で勝手に喋らせてもらうよ。多分君は相当今の状況を嘆いているだろうね? 蛙にされるぐらいなら、いっそ死んだほうがましよ〜とでも思っているかもしれない」


『確かに一瞬思ったことはあったけど……でも蛙の姿でなんかやっぱり死にたくないわよ!』


「確かに蛙に変えられるなんて、いくら何でも酷い話かもしれないけれど……ある意味、君は幸運だったよ。何しろ罪を償うチャンスを王子から貰ったえたのだからね」


『え? それってどういうこと?!』


「まぁ、まぁ、落ち着いて。そんなにケロケロ鳴かれても今の僕には君の言葉は通じていないんだからさ。でも君には僕の話が通じている。だから黙って話を聞いてくれよ? いいね?」


 まるで道化師のようにしか見えない魔法使い男の話に私は黙って頷くことにした。


『王子には罰として君を蛙の姿に変えろと命じられたけれども、多少は良心が傷んだんだろうね? 何しろ仮にも君は王子の婚約者候補であり、侯爵令嬢だったわけだし。だから僕が君を蛙の姿にして、この森に飛ばした後、王子が言ってきたんだよ」


 良心が痛むくらいなら初めから蛙の姿にしなければいいのにと思いながら話の続きを待つ私。


「君が人に感謝できるような行いを続けることによって、いずれ元の姿に戻せるようにしてあげられないかって? どうだい? すごいだろう?」


 人差し指を1本立てて、魔法使いは笑った。多分……。


「そこで君を探してここへやってきたんだよ?新しい魔法をかけて上げるためにね。元々君には複雑な魔法がかかっているから、さらに別の魔法を掛けるから少々不便な事がおこるかもしれないけれど勘弁してくれよ?」


 人間の姿に戻れるならこの際、どんな条件だって飲むに決まっているでしょう!

 私は激しく首を縦に振った。


「プッ! アハハハハハ……! そ、そんな蛙の姿で奇妙な行動取らないでくれないかな? お、おかしい……アーハッハッハッ! く、苦しい……お、お腹がよじれる……」


 魔法使いは笑い転げて魔法どころではない。


『ケローッ!! ケロケロケロッ!!」

(ちょっと!! 早く魔法を掛けてよ!!)


するとこの言葉は通じたのか、魔法使いはメガネを外して涙を拭った。すると驚くべきことに、何とも美しい顔立ちの青年が現れた。


「ごめんごめん……つい、おかしくて笑っちゃって…そんなに怒らないでくれよ」


そして私を見てにっこり笑った。


ドキッ!!


あまりのイケメンぶりに心臓が飛び出そうになる私、


『ケロケロ……ケロケロケロケロ」

(まあ……顔がいいからゆるしてあげるけど)


「よし、それじゃ魔法を掛けるよ……」


そしてイケメン魔法使いは何やら呪文を詠唱し始めた――




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