☆第九十三章 おめでとう。
「どうして赤ちゃんって夜中とか明け方とかに産まれるんだろうね?」
って話を麗奈としていた矢先、陣痛が始まったとの連絡があった。
連絡があったのが、夜の九時ごろだから、ここから何時間かして産まれる。ほら、やっぱり夜中だ。
「賭けようか?」
そんなことを言い出したのは麗奈だ。
「私は今回、赤ちゃんを昼間に産んでみせる」
「一体何の賭けなのw」
「いやー、星弥の時も一晩中お腹痛くて、明け方にやっと産まれたからさ」
「何を賭けるの?」
「藪内さんのキスとか?」
「ええええええ??????」
「それ、わたしが勝ったらいいけど、麗奈が勝ったところで嬉しい?」
「冗談だよ。えっとね、一粒で五千円するイチゴとか」
「あ、それ……どっかで見たことある」
果たして何時に産まれるのかセカンドベイビーよ。
杏の母子手帳を見ると、彼女が産まれたのは午後九時二十五分。夜中ではないが、一応夜である。ネットで調べると月の満ち欠けが関係しているとかしていないとか。
それ以外にもネットには、昼に産まれるケースも多いと書いてあり、特に夜中に集中しているワケではないようだ。
わたしはいつもどおり布団に入ったが眠れない。杏はすでに就寝中だ。
窓から外を見る。月は半月で、今日は十一月の二十二日。出産予定日にちゃんと陣痛を起こす麗奈のセカンドベイビーはもしかしたらきっちりした性格の子なのかもしれない。
なんだか寝付けなくなったので、アルバムを引っ張り出して見ていた。ああ、当たり前だが学が色んなところにいる。お宮参りの写真もあるなぁ……。
そんなこんなで、過ごしていると『産まれた』というメッセージが入った。行登さんからだ。
午後十一時半。早いな。陣痛が起こったのが九時なのにたった二時間半でこの世に誕生したのだ。さすが麗奈の子、母親を苦しめる時間は最小限にとどめておくあたり、偉い。
わたしは家族ではないので、ひょっこり面会なんてできない。こういう時に血の繋がりというものが重視される。
麗奈は家族だ。離れて暮らしていても家族だと思っている。
翌朝、麗奈から写真が送られてきた。かわいいベイビーの写真。ああ、足も手も小さいなぁ……。
おめでとう! この世に誕生したばかりの小さな天使よ。