☆第四十一章 視聴回数がどんどん伸びます!
パソコンを開いて驚いた。視聴回数が先週まで五十くらいだったのが一気に五百とかになっている。どういうこと?
もしかしたら葉月が友達に……一体何人に紹介してくれたのかな? その答えはメールにて判明する。
「先輩の動画、SNSで拡散させましたよー!」
思いがけない協力者のおかげで、視聴回数はその後も増えていく。この頃から葉月とメールのやりとりをするようになった。
『先輩、視聴回数1000超えましたね!』
『嬉しいけれど、葉月、顔広いんだね』
『わたしだけじゃないです。ウサギがインフルエンサーの友達がいるって』
『ええっ、そうなの?』
実はこの間、ウサギに電話をかけようと思ったら、インターホンが鳴って宅急便が届いて、それキッカケに、電話する機会をなんとなく失ってしまっていた。
わたしは恐る恐る、ウサギに電話をかけてみる。
「もしもし」
「あ、早乙女せんぱーい」
懐かしいウサギの甘ったるい声だ。
「動画の拡散に協力してくれているんだって?」
「はい、先輩には色々お世話になりましたから」
なんだろう、拍子抜けしてしまう。
「会社の方はどうなっている?」
「あ、一応、業務は再開しているのですが……。社長と副社長が辞職するそうで、新しい社長が以前から課長代理を担当していた伊月さんに決まりそうで」
伊月さんと直接の面識はない。が悪い噂をいっさい聞いたことがない人だ。
「ただ、マスコミがこれだけ報道してしまったから、会社の信用がガタ落ちで、今後収益が上がる見込みもないかなと……」
いつも甘えて、適当な言葉しか遣わないウサギから収益とかいう言葉を聞くとは思わなかった。
「僕は、もう会社を辞めようと思っていて」
「え、辞めるの?」
「はい。僕の友達にインフルエンサーがいるって話を葉月から聞きました?」
「うん、聞いたよ」
「その友達に新しい事業に誘われているんです」
そうなのか。皆それぞれの人生が進んでいく。
「早乙女先輩にはなんかたくさん迷惑かけてしまって……」
勘違いだったのかな。葉月もウサギも……ちゃんと人間だ。モラルのある人間じゃないか。
「動画の拡散まだまだ協力しますよ」
「あ、ありがとう」
そうやって、さらに一週間後には視聴回数が二千を超えた。驚くしかない。
五月、六月、夏が来て、ツクツクボウシが鳴くころには、視聴回数が一万を超えてサムチューブ側から信頼できるクリエイターとして認められた。
「やったー‼️」
麗奈とハイタッチする。
「有名サムチューバーだよ!」
「まだまだだよぉ」
しかし、一定数までいくと伸び悩む。そうだ、人生そんなに甘くない。
サムチューブで広告収入が得られるシステムについて簡単に説明すると、人気が出て、チャンネル登録数や再生回数が多いサムチューバーにはある称号がつけられる。
その称号をもらうことができれば、動画の最中に広告が流れる。
ただし、得られる広告料としては、再生回数二万回でも約千円から四千円程度なので、利益を上げるためには、もっともっと、再生回数が十万回、百万回と伸びる必要がある。
再生回数百万回なんて、夢のまた夢だ。次の手を考えなければならない。