☆第二十七章 天の川伝説のクリスマス。
家の中にクリスマスツリーを飾ろうとしたが、杏がそれを掴んで立とうとするので危ない。
「うーん、掴んじゃうと転倒しちゃうかな」
「なら、下の部分に工夫をしよう!」
ホームセンターで購入した千九百九十円のクリスマスツリーはそこまで豪華な造りではない。ツリーの足の下にレンガを固く紐でしばって結びつけた。さらにそれでは杏や星弥くんが頭を打ったりしたら危ないので、百均で買ったコーナーガードを取り付ける。
「よーし、これで掴んでも倒れない!」
飾りつけは星弥くんも一緒にやる。
「たんざくにねがいをかくの~?」
「ちがう、それは七夕でしょw」
星弥くんは最近、戦隊ものにハマりだした。サンタさんがきっとおもちゃの武器やら何やらをくれると期待しているに違いない。杏のプレゼントは……?
0歳児にプレゼントをあげても何のことかわからないであろう。
クリスマスの飾り付けをする。なんかワクワクしてきた。
さっき、短冊に願いを書くのは違うって話をしたが、星弥くんが折り紙におぼえたてのひらがなで何か書いている。
『まま わ』
読めるのはそれのみであとは暗号みたいだ。
まま→ママ わ→???
「星弥くん、それなんて書いてあるの?」
わたしがそう尋ねると、ニコニコしながら
「ママ わらうのすき」
と言った。かわいすぎる。わたしの隣で感激している人、約一名。
「星弥~♥♥♥‼️‼️ ママ 笑うよ! 腹筋割れるくらい笑う‼️ 毎日笑う!」
麗奈が星弥くんをぎゅーっと抱きしめてまるで犬のように尻尾ふりふり喜んでいる。なんて可愛いんだ星弥くん、殺人級にかわいい。
「そうだよね、クリスマスといえば短冊だよねっ‼️」
麗奈が折り紙を半分に折って、ハサミで切って穴を開けて大量の短冊を作り始めた。
七夕とクリスマスのコラボだな。
「琴ちゃんも願いごと書こう!」
渡された短冊の数が全部で十二枚。笑ってしまう。
「願いすぎじゃない⁉️」
「いいじゃん!」
というわけで、短冊が大量についたクリスマスツリーが完成する。
『美人になりたい 麗奈』
『どうせならお金もちになりたい 麗奈』
『みんなが健康でいられますように 琴』
『杏と星弥くんがすくすくと成長しますように 琴』
『わたしのこと大事にしてくれるイケメンが現れますように 麗奈』
んんん……⁉️
「麗奈って、再婚願望あるの?」
「え、うんあるよー」
始めて聞いた。
「まぁ星弥がいるから、簡単には無理だろうけれどね。めっちゃ都合のいいイケメンとか現れないかなぁって思うよ」
そういえば元夫も、長身美形だったな。
「もしかして面食い?」
「面食いだよ。うどんもパスタも好き~♪」
「麺違いだよw」
再婚。そんなのアタマの片隅にもなかった。わたしはまだ、麗奈のことすべて理解していないんだな。
わたしは残っていた短冊にペンでこう書いた。
『麗奈に素敵な彼氏ができますように 琴』
みんなの願いは一体誰に届くのかわかんないけれど、叶ったらいいな。