斎藤さんがワンピースを上半身までめくり上げた。
フリルの付いたピンクの下着があらわになり、
ブラジャーに包まれた胸もはっきり見える。
「二人きりになったらいきなり私の服をまくりあげて挿入しようとしてきたって」
「そんなの嘘だ!!」
-「この状況で?」
斎藤さんの服はめくれて俺はズボンを下ろしている。
客観的に見ればどう見ても俺が襲っている。
「ふ、服を下ろして」
「え? トランクス下ろしてほしいって?」
俺の言葉は曲解され、座った状態で無理やりトランクスを下ろされる。
「うわっ、前から思ってたけど大きいよね」
「やめて、やめて……」
斎藤さんの前で大きくなったものを出してしまった。
いつ山本さんが扉を開けて入ってくるかもしれないこの状況で、だ。
もし今扉が開いたら……。
「好きな子の部屋でチンコ出してる気分はどう?」
女子の口から「チンコ」なんて単語を聞いたのは初めてだった。
だからこそはっきりイメージしてしまう。
(山本さんの部屋で出してる……)
いつか山本さんと、と考えたことはある。
なのに今見せてるのは斎藤さんだ。
「しごいてあげる」
~~~~
「あっ、で、出る」
「……出過ぎ。濃いし苦いし」
「ごめん……」
「ねぇ、好きな子の部屋で好きな子の友達の口に射精した気分はどう?」
「そ、そんなこと」
「気持ちよかったでしょ、最高だったでしょ」
返事をせず急いでパンツとズボンをはく。
山本さんが帰ってくる前に元の状態に戻さないと。
「射精したらこの態度かぁ」
「友里恵ー、ドア開けてくれる?」
なんとかぎりぎり間に合った。
一応斎藤さんもめくった服は戻してくれている。
「ちょっと待ってねー、あっ」
口では「あっ」と言ってるけど、
実際は意図的に俺の股間に紅茶をかけた。
「冷たっ!?」
「え、なに、どうしたの?」
「ごめーん、紅茶こぼして高木君にかかっちゃった」
「大変じゃない!!」
山本さんが部屋の前から離れる音がした。
「どうしてこんな……」
「これで匂い誤魔化せるよ」
「そうかもしれないけど……」
会話中にドアが開いた。
思っていたより早く山本さんが戻ってきたらしく、
手にはタオルを持っている。
「ズボンが完全に濡れてるじゃない」
「ごめーん」
「あたしじゃなくて哲也に謝りなさいよ」
「ごめんね、高木君」
「う、うん」
「タオル当てるからちょっとこっち来て」
「自分で拭くよ!?」
「やってあげるって言ってるでしょ」
無理やり立たされて股間を拭かれる。
(好きな子に股間を拭かれるなんて)
悲しいような恥ずかしいような変な感覚だ。
「これ脱いだ方がいいわね、ちょっと待ってて」
そう言うとタオルを俺に預けて部屋を出て行った。
直後に隣の部屋から声が聞こえる。
「透、入るわよ」
「なんだよ姉ちゃん、部屋に籠もってろといったくせに勝手に部屋に入ってくr、うわっ」
「うっさい、用事なのよ」
「なんだよ、その恰好。彼氏来てんじゃないの?」
「彼氏じゃないし友達も来てるっていったでしょ!!」
「あっ、そういうことか、アピールを「黙らないと殺すわよ」
「こわっ」
「男物のパンツとズボン寄こしなさい」
「へ? そんなもん何に使うの?」
「姉がいるって言ったら弟は素直に渡すものよ」
「横暴すぎるだろ」
「急いでるんだからね」
「はいはい、えーとパンツは新品の方がよさそうかな」
「当たり前でしょ、ズボンはお古で我慢したげる」
「寄こせと言った上に我慢したげるとはこれ如何に」
「ころしてでもうばいとる を選ばれたくないなら早く」
「物騒すぎるわ!? はいこれ」
「ありがと」
丸聞こえなんだけど……。
弟さんには非常に迷惑をかけてしまったようで申し訳ない。
あと地味にゲームネタを言ってたけど好きなんだろうか。
「弟から借りてきたからこれ使って」
にこやかな笑顔で部屋に入ってきた山本さんからは、
弟さんとの会話のような横暴さはみじんもなかった。
「えっと、いいの?」
「大丈夫、快く貸してくれたから」
快く、だったかな?
でもたしかに意外と明るい感じの対応だったな。
いつもあんな調子で無茶なお願い聞いてるのかもしれない。
……ズボン返す時にお詫びの品も渡そう。
「ズボンとパンツはうちで洗って返すから」
「いやいや!? そこまでしてもらわなくても」
「あたしがするって決めたの」
あ、駄目だ。絶対に譲らない目をしてる。
斎藤さんに助けを求めようとそちらを見たけど、
完全に面白がる目で見てるので無理だ。
「じゃあ脱衣所に案内するからそこで着替えてね」
「はい……」
そのまま脱衣所に連れていかれて着替えた。
洗濯物は洗濯機に放り込んでほしいとのことで、
自分で洗濯機に入れた。
・・・
「今日はこれぐらいね」
「ううーん、疲れたー」
「ありがとう」
「自分一人でも頑張りなさいよ」
「めんどくさいよね、高木君?」
「いや、せっかく教えてもらったし頑張るよ」
「ええー」
「それが当り前よ」
大分しっかり教えてもらったおかげで、
なんとか昔の記憶が戻ってきた。
明日も勉強すればそれなりにまともな成績は取れるだろう。
「ズボンは明日返しに来るから」
「そう? じゃあ待ってるわね」
斎藤さんと二人で山本さんの家を後にする。
「よかったね、また明日も会える理由が出来て」
「どうしてあんな真似を」
「言わなかった? 匂いを誤魔化すためって」
「それは聞いたけど、そもそもなんであんなことを」
「さあ? 自分で考えてみたら?」
「自分でって……」
「
意味深な台詞と共に去っていった。
(本当に一体何なんだ……)
気持ちいいことをしてもらっているけど理由がわからない。
してくれるときもこちらに愛情どころか興味すらないように見える。
なんというか怖い……。