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9. 島村さんの元彼

「あ、隆之……」

「なんだ、男作ったのか?」

「ち、違うよ」

「ならよかった、ちょうどいいからフェラしてくれよ」

「え……」

「なんだ? 昔はすぐしてくれたよな?」

「でも……もう……」


明らかに島村さんがおびえている。

会話の感じから見て彼氏というより元彼だろう。

(でもいきなりこんな場所でフェラしてくれとか言うか?)

普通は元彼どころか彼氏でもそんなこと言わないだろう。

それに島村さんの感じだと場所の問題ではなく、

やること自体が嫌なように見える。

(なんとか出来るか?)

俺が絡む話じゃない、

でも嫌がってる島村さんを放置なんて出来ない。


「詳しく話を聞かせてほしい」

「ああん?お前には関係ないだろ」

「いやいや、ようやく島村さんの彼氏になれたんだから関係者だよ」

「ん? 今彼氏じゃないって言ってなかったか?」

「照れてるだけだよ、ね?」

「え、あ、うん」

「彼氏ねぇ。はー、こんなブスの?」


勝手に彼氏名乗ったのに、

驚きつつも話を合わせてくれた。

申し訳ないけど彼との会話が終わるまでは彼氏の振りをさせてほしい。


「え?そっちも島村さんの彼氏だったんじゃないの?」

「俺はそいつが告ってきたから付き合ってやっただけだ」

「島村さんから告られるとかいいなぁ、こっちは告ってやっとだよ」

「そんなブスに告ってどうすんだよ」

「島村さんのどこがブス?めっちゃかわいくない?」

「ガングロのどこがかわいいんだよ」

「ガングロと全然違うじゃあないか。あんな真っ黒な肌じゃなくて小麦色でハリがある。肌を近くで見てもつやつやしていてガングロのボロボロ肌とは比べ物にならない」

「いきなり早口でしゃべんな、オタクかお前は」

「オタクだよ、だから好きなものには早口になるんだよ」

「はっ、オタクに彼女なんて出来るかよ」

「そっちは彼女に困ってなさそう」

「女なんてあっちから来るもんだろ」

「羨ましい、こっちは自分から動いてようやく」

「だからってそんな誰も相手にしない女を選ぶか?」

「そっちから見たらそうかもしれないけど俺から見たら女神だよ」

「オタクの相手してくれるからってか」(笑)


若干態度が柔らかくなった。

この反応ならなんとかいけるか。


「もうフェラはされたのか、俺がしっかり仕込んでやったから気持ちいいぞ」

「まだまだそんな所までいけてない」

「はぁ?そいつに告られて2日目にはもうフェラしてたぞ」

「いいなぁ。俺も早くしてもらいたい」

「まあ何本咥えたか分からない口だけどな」

「逆に考えたらどうだろう」

「はぁ?」

「いろんな男と付き合っていた女が自分一人だけの女になったら興奮しない?」

「……それはそうかもな」

「俺も島村さんを俺一人の女にしたいんだよ」

「なるほどな……分かった、オタクくんにそいつあげるわ」

「ありがとう、そっちも彼女出来たら教えてよ」

「もうオタクくんが目に出来ないぐらいの美人の彼女がいるぞ」

「それなら一度ぐらい見せてよ」

「あー、はいはい、機会があったらな」

「楽しみにしてる」


彼が去っていった。

島村さんは驚いた表情でこちらを見ている。


「あの……」

「ごめんなさい!!」


島村さんに頭を下げる。


「勝手に彼氏名乗ってごめん。嫌がってそうだから何とか出来ないかと思ったんだ。多分あの感じならもう島村さんの所には来ないと思う。もし来ても俺のことを聞きに来るだけだろうから適当に答えて大丈夫」


いくら相手を追い返すためとはいえ好き放題言ってしまった。

勝手に彼氏を名乗った上にフェラしてもらいたいとか失礼にもほどがある。


「大分失礼なことを言っちゃって本当にごめんなさい」


顔を見るのが怖い。

怒っているならまだしも嫌われたら……。

(いや、追い返せたなら悔いはない)

何もせず嫌われなかったとしてもきっと後悔していた。

やっておけばよかったと後悔するのはもう嫌だ。


「その、別にいいよ」

「え……」

「私のためにやってくれたんだよね、嬉しかったよ」


聞こえてきた声はいつもと変わらない優しい声だった。

顔を上げると向日葵のような笑顔でこちらを見ていた。

(綺麗だ)

途端に目を合わせるのが恥ずかしくなる。

結局そのまま別れるまで島村さんと目を合わせられなかった。


家に帰ったあと、今日のことを思い出す。

今日は衝撃的なことがたくさんあった。

大木さんには口でしてもらったし、

島村さんにはとてもきれいな笑顔を見せてもらった。

思い出すと自然と股間に手が伸びた。


この時代は簡単にオナニーの素材を手に入れられる時代ではない。

例えばネットで入手しようとするなら、

アングラなサイトに行って、

ウイルスやQ2を警戒しながら隠しリンクや画像変換を突破して、

ようやく裸画像を一枚手に入れられるかどうかだ。

それも言っちゃ失礼だけど美人じゃない女性で、

おかずにするには微妙なことも多い。


ちなみに大人であればAVや写真集がある。

でもAVは高校生には貸してもらえない。

写真集は本屋で買えるけど店員次第なのでギャンブルだ。

ただ写真集には抜け道が一つだけある。

(せっかくだからやってみるか)


私服に着替えて自転車に乗って走り出す。

目的地の場所は覚えているので問題ない。

自転車で走っていると段々周りが暗くなってきた。

この時代は街灯も少ないので運転しづらい。

(でもこれぐらいの暗さじゃないと)

なんとか目的地に到着した。

そこには写真集の自販機が存在していた。


多分見たことがない人がほとんどだろう。

ただ想像はしやすい。

菓子パンの自販機と同じ感じで本が入っているだけ。

なぜそんな売り方をしているのかは分からない。

でも今大事なのは、[お金を入れれば出てくる]ということだ。

(やり直し前は買う勇気がなかった)

遠くから眺めているだけで買うことはなかった。

でも今は違う。

(社会人の経験があるから別に恐れることはない)

そう、写真集を買うのなんて慣れたものだ。

購入しようと自転車を止めて降りた。


「あれ? 高木君?」

「ぶほっ!! し、しまぶらさん!?」

「ふふっ、どうしたの? 噛んでるよ?」


私服で犬を連れている島村さんが声をかけてきた。

(なんでこんな場所に!?)

しかし考えれば分かることだった。

島村さんの家はこの近くだ。

昔何度か行ったことがある。

むしろその時ここに自販機があることを知った。

(自販機思い出したならそれも思い出しておけよ、俺!?)


「こんな所で会うなんて珍しいね」

「ソウデスネ」

「何か用だったの?」

「イエ」

「なんで片言なの?(笑)」


ど、ど、どうしよう、

写真集買いに来たなんてバレたらドン引きされる。

何か、何か言い繕わないと。


「し、島村さんに会いに来たんだ」

「私に?」

「ちゃんと目を合わせてお別れの挨拶出来なかったから」

「そんなことのためにわざわざ?」

「そう」

「変な高木君」


クスクスと笑っている。


「じゃあ、島村さん、改めてさようなら、また明日」

「うん、また明日ね」


そのまま自転車に乗る。

(な、何とかなった?)

まだこちらを見ているようなので、

そのまま自転車をこぎだす。

(まさかあんなタイミングで会うとは)

写真集は買えそうにない。

いや、むしろ買えなくてよかったのかもしれない。

(買っていたら見られていたかも)

犬の散歩で出歩いているならいつ見られるか分からない。

今度は同じ言い訳出来ないしやめておくに越したことはない。

(しかしそうなるとどうするか)


写真集は入手できなかった。

なので必然的に想像でオナニーすることになる。

想像しやすいクラスメイトはその筆頭だ。


今までだと山本さんが一番多かった。

最近は島村さんが一気に伸びてきた。やっぱり下着姿を見ているのが大きい。

でも今日ので大木さんが一躍TOPだ。

なんといっても想像じゃなくて実際に気持ちよくしてもらった。

あの感覚は一度覚えたらもう忘れられない。

それに島村さんは今日の笑顔が焼き付いている。

オナニーで使うとその笑顔を汚してしまう気がした。

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