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7. 大木小夜のねじれた性癖

私はかつて目立ちすぎたことでひどいいじめを受けていた。

もしいじめがなければこんな性癖にはならなかっただろう。

もっと大人しくしていればと後悔してもしきれない。


いじめはある日突然始まった。

最初は女子からの無視からだったが、

いろいろあって他のいじめ被害者に奉仕を強制させられた。


いじめ自体は遠くに転校することで解決したが、

心の傷は消えない。

特に性的ないじめは特に大きな爪痕を残した。

あれだけ嫌だった奉仕がしたい、

男を支配したいと思う自分がいる。

そうして経験の少ない男を漁るようになった。


そしてある日のこと。

男との行為を一通り終えて一息ついた時だった。


カランッカランッカラカラ


空き缶を蹴った音がする。

とっさに音のする方を振り向く。


「誰!?」


建物入り口に男子学生がいた。

口をあんぐり開けて馬鹿っぽい面をしている。

その顔には見覚えがあった。


「高木君……?」

「あっ、やば」


名前を呼ばれた瞬間逃げていった。

(完全に見られた!?)

今まで見られたこともなかったので無警戒だった。

しかもよりによって高木に見られたのはまずい。


高木はクラスメイトだ。

顔は普通未満で、

成績も大して良くないし運動も出来ない。

よく言えば賑やか、悪く言えば騒がしい男。


そんな男なのに、私の高木の印象は「怖い」だ。

高木は入学当初から目立っていた。

それも漫画やおもちゃを持ってきたり普段から騒がしかったりと、

悪い意味で。

そんなことをすればどうなるか。

案の定、クラス内で力を持っている男子グループに目をつけられた。


そしていじめが始まった。

前に見たのと同じで男のいじめは暴力から始まるらしい。

通りすがりに軽く小突かれたり足を引っかけられたりしている。

(自業自得だ)

男子グループTOPに立てるような能力もないのに

むやみやたらに目立とうとするからいじめられる。

(わたしのように注意して行動すればいいのに)

今までいじめられたことがないんだろう。

だから対処方法も知らないんだ。


高木は暴力を受けても下手くそに笑っている。

その姿が昔の自分と重なって嫌になる。

どうせ何も出来ないままエスカレートしていくんだろう。

そう、思っていた。


男たちのいじめが次に進んだ時のことだ。

漫画を取り上げられて捨てられた。

すると今まで笑っていた高木が真顔になる。

つかつかと相手の男子の机に向かうと、

相手の鞄を窓から投げ捨てた。

ここは3階で窓の下は中庭になっており池もある。

「ふざけんなよ!!」そう言って下に向かう相手の男。

「ちゃんと人や池は避けたよ」そう言って捨てられた漫画を拾う高木。


クラスが一斉に静まった。

(怖い)

おそらくクラス全員同じ気持ちだろう。

自分の漫画を捨てられたからやり返す。

その気持ち自体は共感できなくもない。

ただそれを躊躇なく実行できるかは別だ。

もしやるとしても衝動的なものだろう。

だけど高木は「ちゃんと人や池は避けたよ」と言った。

""""

(当たり前のように他人の鞄を投げ捨てられる精神が怖い)

今動けば何をされるか分からない。


誰も物音ひとつ立てないまましばらく時間がすぎる。

なんとか他の男子グループのTOPが、

振り絞るようにして「大変だったな」と声をかけ、

高木が「捨てなくてもいいのにね」と答えたことで、

ようやく緊張が解けた。


でも一番怖かったのはここからだ。

次の日、

相手の男は完全にビビっていた。周りもそうだ。

喧嘩でも始まるのかと思っていたら、

[昨日のことなんて何もなかった]のような態度で、

会話を始めたのだ。

恐怖以外の何物でもない。

男たちのいじめは一瞬でやんだ。

あんな行動を見せられれば無理もない。

これ以上何かすればいったい何をされるのか。


そんな高木に見られた。

(警察に通報されるだろうか?)

いや、あの様子だとずっと覗いていたのだろう。

通報する気ならやっている時に現場を押さえた方がいい。

(そういえばいつも着替えの時チラチラ見ていたな)

もしかしたら体を要求されるかもしれない。


……また男に体を差し出すのか。

それも一度で済めばまだましだ。

何度も何度も好きな時に呼び出されて、

奴隷のように扱われるかもしれない。

対策が必要だ。


・・・


朝一から部室を準備した。

シャツのボタンを2つ外してスカートも上げた。

家から持ってきたビデオカメラを隠して設置し、

敷布団も用意した。

(床で犯されるのは昔を思い出して嫌だ)


万全の準備を終えたが一向に声がかからない。

次の日になると準備が無駄になるので、

先手を打ってこちらから誘った。

後はわたしを襲っているのを撮影して脅迫し返すだけだ。


そう思って強気な態度でいたけど、

突然土下座された時は驚いて演技が崩れてしまった。

どうやら覗いたことを謝罪しているらしいが理解に苦しむ。

(考えがまったく読めない)

やはりここで口止めしておかないといけない。

放っておいたらどういう行動に出るか分からない。


土下座を止めさせて改めて口止め料についての話を振る。

同時にリモコンを使ってビデオカメラを録画モードにする。

体かお金を要求されるだろうから証拠を残すためだ。

そう思っていたのに要求されたのは、

「照明班の仕事をしてほしい」だった。

しかもそれをOKすると、

そそくさと部室から出ていこうとする。

(まったく理解できない)

あんなことで本当に口止め料のつもりだろうか。

それ自体は楽でいいけど、

このままじゃこちらの口止めが出来ない。


無理矢理笑顔を作ってあいつを呼び止める。

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