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3. 男女一緒の着替え

昼休みの屋上


「高木はいいよな、佐々木と一緒の班で」

「そうそう、佐々木と一緒に作業とかうらやましい」


男子は大体屋上で無駄話をしている。

教室内だと女子がいるので下ネタとか言いづらいからだ。

ただ夏が近づくにつれてだいぶ暑くなってきたので、

そろそろ屋上付近の階段に移動する時期かな。


「山本がいなけりゃ入ったんだけどな」

「佐々木と山本で明らかに対立するよな」

「どっちについても後が怖そうだ」


今日の話題の中心は文化祭の班分けだった。

みんな佐々木さんと一緒の班になりたがっていたので、

今日の班分けはある意味苦渋の決断だったようだ。


佐々木さんと一緒の班になりたいけど、

山本さんとトラブルが起きるのが目に見えてる。

そこで失敗すれば仲良くなるどころか嫌われる。

メリット・デメリットを天秤にかけて、

泣く泣く一緒の班にならなかったらしい。


「だからと言って俺を羨ましがられても」

「お前、見た目だけなら山本と佐々木揃ってるって両手に花どころじゃないぞ」

「深窓の令嬢もいるしな」

「クラスの美人を集めましたって状態だな」


最後の一人に大木さんが来たことで、

美人の女子3人で男が一人という状況。

残った斎藤さんも十分かわいいので、

まるでハーレムのような状況だ。

あくまで状況だけ見れば、だけど。


「俺なんて佐々木のグループと一緒になったのに肝心の佐々木がいないんだぞ」


天を仰いで嘆いているけど、

かなり失礼なこと言ってるな。

女子が聞いたら怒り出すぞ。

第一、佐々木さんのグループなら島村さんがいるだろうに。


「佐々木さんのグループなら島村さんも美人だろ」

「は?あいつの肌褐色だろ」

「顔以前の話だよな」

「ガングロって何がいいんだ」

「化粧のガングロと違って健康的な小麦色で良いと思うんだけど」

「あいつはモテないぞ。中学の時振られてたし」

「男に告白されたらすぐ股開くんじゃないか」

「島村さんへの侮辱はやめろ、ぶち殺すぞ」

「うわっ、怖っ、そんなマジになるなよ、冗談だよ」

「言っていいことと悪いことがあるだろうが」

「お前、島村好きなの? 珍しいな」

「たしかに普段から仲いいよな」

「いや、ろくに会話してないぞ」


一言二言ぐらいしか話すことが出来ていないし、

あれで仲が良いなんて言えないだろう。

(もっと仲良くしたいんだけどな)

でも無理に話すと嫌われそうで怖い。


「島村が用事もないのに自分から男に話しかけるのってお前ぐらいだぞ」

「あ、一応小学校の頃一緒に遊んでたからじゃない?」

「小学校ってお前、中学別だったんじゃないのか?」

「微妙な学区違いで中学だけ別だったんだよ」


それさえなければ島村さんともっと仲良く出来ただろうか。

いや、小学校のころは無意識に会話してただけだろうし、

意識し始める年齢になったら結局疎遠になってそうだ。


「そうか、その時に島村を好きになったのか」

「刷り込みって怖いな」

「光源氏計画だったか」

「なんで島村さんを好きになるのにそんな大層な計画が必要なんだよ」


そもそも肌の色と美人かどうかって関係ないと思うんだけどな。

要は似合っているかどうかだろう?

その観点で見れば間違いなく似合ってる。

さらに擁護しようと声を出そうとした瞬間、

女子の声が聞こえた。


「あれ~?みんなまだ残ってたの?」

「げぇ、佐々木!?」

「なぁに?化け物でも見たような表情して」


気づくと佐々木さんと島村さんが後ろにいた。

島村さんと目が合うと会釈されたのでこちらも会釈を返した。

やっぱりかわいいよな。

肌の色で目が強調されて大きく見えて、

少したれ目になっているのと合わさって独特の魅力になっている。

佐々木さんと並んでも決して見劣りしていない。


「何の話してたのかな~?」

「い、いや、大したことない話だよ。な?」

「そ、そうそう」

「ぶ、文化祭の班分けについてちょっと」


これはタイミングが悪すぎる。

女子の話でそれも悪口に近いことを言ってた時に、

よりによって当人が来た。

佐々木さんの表情が怖いくらいの笑顔なので、

実は話を全部聞いていて、

怒っているのを隠しているかもしれない。

下手なことを言うと大変なことになりそうだ。


「そ、そろそろ昼休み終わるしもう行こうぜ」

「そ、そうだな」


取ってつけたように理由を説明して教室に向かう俺たち。

佐々木さんがその様子を無言で見ていたのが怖かった。


・・・


次の教科は体育か。

みんなが着替え始めたのを見て、

高校時代が夢みたいな環境だったことを思い出す。


目の前では男子と女子が一緒に着替えている。

仕切りとかがある訳じゃないし、

着替える場所が分かれている訳でもない。

一部グループで集まっている人がいるものの、

基本自分の席で着替えている。


もちろん最初からこんな状況だった訳ではない。

この学校は1学年で普通科・国際科含めて8クラスあるが、

体育の際は2クラスごとに男子と女子に教室を分けて着替えている。


普通科同士のクラスはそれで問題がなかった。

うちのクラスのように、

普通科と国際科のクラスだけが問題が発生した。


国際科は男女の比率が1:9で非常に女子が多い。

その結果、男子と女子で教室を分けると

男子は40人用の教室を24人で使い、

女子は40人用の教室を56人で使うことになる。


最初はちゃんと女子が国際科のクラスに移動して着替えていた。

しかししばらくして山本さんのグループが

「あんな狭いところで着替えられない」

と言って男子が着替えている教室で着替え始めた。

男子が同じことをしたら先生を呼ばれただろうけど、

女子がする分には誰も文句を言わない。

そして1グループが同じ教室で着替え始めると、

みんな真似し始めていつの間にか全員一緒に着替えていた。

ちなみに向こうの男子4人も、

いつのまにか女子に混じって着替えていたそうだ。

あっちは教師を呼ばれたら人生終了の状況なのによくやるものだ。


よく男女の着替えが一緒になったらという妄想があるけど、

実際にその状況になると露骨に女子を見ることなんて出来ない。

チラチラと見るぐらいが限度だ。


それに女子側もある程度隠して着替えるテクを身に着けている。

例えばたいてい下着の上にTシャツ着ているのでブラは見えない。

またスカートの上から短パンを脱いだりはいたりするので、

パンツが見えることはない。


ただ人によっては独自の着替え方をする人もいる。

例えば山本さんはTシャツを着たくないらしく、

体操服をうまく使って隠しながら着替えている。

大木さんはTシャツを着た上で隠しながら着替えている。

佐々木さんは一切隠すことがなく手早く着替える。

周りを伺いながらタイミングを計っているみたいで、

ほとんど見ることができない。


ちなみに男子は隠す理由がないので大体パンイチで着替えてる。


「キョロキョロしてると怪しいよ」


そして今声をかけてきた島村さんだが、

ゆったりと着替えるのに上半身を一切隠さない着替え方だ。

制服を脱いでブラだけの格好になり、

そこから体操服を着る。

さすがに下半身は隠しているけど。


「どうしたの?」

「あ、いや」


つい目線が頭より下に行ってしまう。

島村さんの上半身は制服を脱いでブラだけだ。

小麦色の肌に白いブラがまぶしい。

(けっこう大きな膨らみで柔らかそう)

申し訳ないと思いつつも、

夜のおかず用に目に焼き付けておく。


「男女で一緒に着替えてるって珍しいよね」

「高校生では珍しいな」

「高木君はトランクスなんだね」

「……返事に困る」


中学校ではブリーフだった。

でも女子に見られるとなるとブリーフは恥ずかしすぎた。

隠して着替えればいいと思うだろうけど、

そんなことをしたらからかわれるだけだ。

下手すればオカマ野郎とあだ名されてしまう。

それを島村さんに説明するのも恥ずかしい。


そんな俺の葛藤はいざ知らず、

ニコニコ笑って楽しそうにしている。

上半身をまったく隠す様子がないけど、

島村さんは見られて平気なんだろうか?


それにやり直し前を思い返してみても、

こんないい思いした記憶がないんだよな。

やり直し前の島村さんはTシャツ着てた気がするし、

着替え中に声をかけてこなかった。


何か変化するきっかけがあったんだろうか?

もしかしたらやり直し前と違う行動を取ったから、

島村さんの行動も変わったのかもしれない。

もしそうなら他の人の行動も変わるということだろう。

他人の行動なんて覚えていることはほとんどないけど、

注意しておいた方がいいな。

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