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第8話 微笑む少女(その2)

鏡の中のイライザは優しく微笑んでいる。

もしかして、イライザは悪い人なのか。そんな疑問が頭をよぎった。

でも、せっかく一方的に悩みを聞いてくれる魔法のアイテムはありがたい。

私は、さらに他愛もない会話を続けることにした。


「ねぇ、イライザ。人間関係がうまくいかなくて苦労していた私の話を聞いてくれる?」

「聞かせて、聞かせて、リリカ」

鏡の中のイライザは私の話に乗り気である。


正直、来週から始まる魔法大学生活も怖いが、何とかなるだろうという心構えがある。 というわけで、入学する際に、自分がすべきだった努力を語ってみよう。私自身の教訓のためにも。


「ねぇ、イライザ。怯えずに挨拶を続けるべきだったと思うの」

入学したての私は、勇気を振り絞って同級生達に挨拶をすることができた。 それを続けたかった。 途中で怖くなって、こんな陰キャラに出迎えられたら変な雰囲気になるんじゃないかという不安で挨拶をやめた。 陰キャラの代表としては分かるが、陽キャラの笑い声がちょっと怖い。 特に敏感な人は心が折れると思う。

でも、考えてみて。 挨拶はポジティブなキャラクターが笑顔で挨拶を返す。そういう状況になると大変だとは思うけど、ポジティブな笑顔に黙れなどは含まれていないと思う。 そう考える人がいたら、誤解されすぎて危険だ。

「ポジティブなキャラクターを怖がりすぎる私たち。ネガティブなキャラクターでごめんなさい。複雑に状況を頭の中で解釈しているだけだったわ。 多分。とりあえず怖がるのをやめた。 怯えると相手にもそういう雰囲気が伝わるから」


私は独白を始めた。

「ねぇ、イライザ。私は嫌われる人ではないと思うの」

これが思春期なのかな。自分は好かれる資格がないと心の底から思っている人に言いたい。私に言いたい。 絶対違う!

教える仕事が大好きな私としては、誰にでも素晴らしいところがあると考えている。 私は隣人たちを本当に愛している。 私も人間なので、イライラすることもある。しかし、その人の行動がイライラするからといって、その人自身がイライラの塊であるとは限らない。

「私が個性的でないと困る人もいるかもしれないけど、それは問題ないと思うの。特別な人とは?かわいいとは? 頭を目立たせたいのですか? そういう人が好きで仕方がないのですか?そういう人はどこにでもいると思うの」

私は敏感で、自意識過剰で、熱くも冷たくもあるけど、真面目で短気で、好きな人には献身的だ。 私はずっと片思いをしている。 私は今後も恋をするつもりだ。 敏感な人も真面目な人もどこにでもいる。 それは特別なことではなく、あらゆる場所にある要素の組み合わせが私を私たらしめるのだ。 特別に持つ必要はないと思う。 その組み合わせは私をかけがえのないものにする。

「私って、可愛いね」


何故だかわからないが、私は独白は止まらない。

「ねぇ、イライザ。精神の壁が厚い人と接する頻度を増やすべきだと思うの」

最近まで同年代の友達が一人もいなかった。

怖くて話せなかった。 私はアルバイトで一緒に仕事をしているので言いたくないのだけど、彼らとコミュニケーションをとっている。 自然に話せる。 でも、できない。 この違いは単に連絡先の数によるものなのか? と思う。 せっかく話さなければならない状況に追い込まれたからこそ、話せたのに。

「最近仲良くなった気がする同い年の友人は、恥ずかしがりながらも気兼ねなく話しかけてくれるの。魔法大学についても、頑張って聞いてくれるの。最初は小さくても短くても構わないの。 反応が悪いと思っていても、気兼ねなく話しかければ、心の壁が取り除かれると思うの。私はコミュ障の人に不信感を持っていたけど、ありがたいの」

ただ、同年代の友人のように、周りの人が躊躇なく話しかけてくるとは思えない。 だからこそ、自分に言い聞かせた。本当にばかげているかどうかは気にしない。 友達を作りたいなら、そうしなければならない。本当は友達が欲しいのに、「卒業したら縁を切ります」とか言うと、私は卑屈になってしまう。


鏡の中のイライザは優しく微笑んでいる。

「それで全部ですか?リリカの不満を全部受け止めてあげるよ」

魔法大学ではまだ友達があまりできていないけど、迷わず友達を作りたい。 人間関係をよくしたい。 最近よく考えるが、本当に些細なことだ。少し勇気がいるかもしれないが、健康のためには人間関係がとても大切だ。

「イライザ。私はがんばるので、一緒にがんばる勇気を下さい」

私はいつの間に、鏡の中のイライザに懇願していた。


私の精神は、かなり安定してきた意外と精神的に不安定だった時期を乗り越えたのかもしれない。

まだ魔法学校に行きたくないけど、考えずにはいられない。 悩むのは時間の無駄!


いち早く魔法学校生活を始めた学生は誰しも不安を抱えている。

同級生達の声を聞くと、「新学期はストレスがたまる」という人達も少なくはない。私のように、友達ができるかどうかにかかわらず、学校自体が嫌いな生徒もいる。

最近、同年代の友人と話すようになり、昨日まで「まだ友達がいない」と言っていた。 それを聞いて安心する自分もいる。

先日、その子が魔法大学で指導を受けていたようで、「友達ができた!今から一緒にご飯を食べます!」と連絡が来た。素晴らしい。 少し緊張しているようだけど、うまくいくはずと願うばかりだ。


「ねぇ、イライザ。それにしても、みんな不安を隠すのが上手すぎると思うの」

私は顔や体に直接緊張や不安を表現するタイプだ。 顔はひきつり、体はカチカチ。

不安や緊張は、隠せば勝てるかもしれない。 確かに、魔獣語でスピーチをした時だけ、誇らしく輝いていた気がする。今思えば唯一の輝かしい瞬間だった。不安も緊張も吹っ飛んだ。


私は曲を聴きながら洗濯物を干すのが日課だ。大好きな声を聞いた瞬間、涙が出る。

どうしてか分からない。 私でさえ驚く。

最近、人生で経験したことのないほど不安定だ。日中仕事をしている時は平気だけど、帰宅したら不安に駆られる 。毎日。

そんな私は新学期が大嫌いで、明るい未来が想像できない。


そして一ヶ月半前に別れた元恋人の影もあった。

私の元カレは私に 数年間の猶予期間を与えてくれた。

彼は「彼氏の存在があなたの可能性を狭めてほしくない」と言った。社会人になってからの3年と学生時代の3年は価値が違う。学生時代、社会人として苦労した元恋人がそう言うならそうだろう。

別れたのはたまたまの嘘だった可能性が非常に高いけど、それがその時だと思う。

それどころか、完全にあきらめることができると嬉しい。


元恋人は全然苦しそうに見えないので、そう見えないだけなのかもしれないけど、私は苦しかった。 その積み重ねと、本来の人への不信感で新学期を乗り切る気がしない。


だから、洗濯中に好きな人の声を聞いて泣いた。

その後、状況は変わったのかと聞かれれば変わっていない。

「みんなこんな夜を迎えているんだなと思うの。 どんなに辛くても、必ず朝が来て、また一日が始まるの」

鏡の中のイライザは優しく微笑んでいる。


記憶の奥に閉まっていたことが溢れだしてくる。

イライザの微笑みが、私の心の中を空っぽうにしてくれるようだ。

でも何故、こんなにも不満が口から出ていくのだろうか。

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