「やあやあ、モテ男さん。土曜日、日曜日と連続で女とデートだなんて、暇なしだな」
「………………」
欅宮さんとのデートを終えた翌日。日曜日。
昨日の夜、茶谷さんが送ってきたチャットには、確かに『昼の十二時集合だ』と書かれていた。
ところで、現在の時刻を見てみよう。
13:14
「……あの、ちょっとさすがに遅れすぎでは?」
「む、なんだ? デートだというのに、いきなり女が来てお説教開始か? モテないぞ、そんなことしてたら」
「どの口が言うんですかそれ……。それに、いいですよモテなくても……。俺、十一時の五十分くらいにはもう着いてたのに……」
げんなりしながら言うと、茶谷さんもなぜかげんなりして、
「十分前か……。はぁ。やっぱりダメだな、君は。女とのデートならば、普通十五分前集合だろう? やれやれだ」
「ほんと、どの口が言うんですかねそのセリフ! ったく! 俺もう帰ろうかと思ってましたからね!」
そうやって言う俺を見て、茶谷さんはまた「はぁ」とため息をつく。
で、やれやれのポーズ。
俺、今日この人と何するためにここにいるんだっけ。
呆れすぎて、今日の目的すらも忘れてしまう始末。
まあ、もう会えたからいいけどさ……。はぁ……。こっちがため息つきたいよ。
「じゃあ、とりあえず合流もできましたし、話し声が漏れないところにでも行きますか?」
「えぇぇ……? 変態、会っていきなりヤるタイプか? さすがは変態だなぁ……」
「やるって会話をやるんですからね? 勘違いしないでくださいよ? 間違っても『や』の文字をカタカナにしないでくださいね?」
「変態に付き合う世の女たちは大変だ。私はもう膝をつきそうになってるぞ……」
「だから、訳わかんない苦労しないでいいですから。ほら、行きますよカラオケハウス。あそこなら声漏れないし、会話してても誰かに聞かれることないですし」
「お、犯す気か……?」
「犯さねーよ! だから何でそうなるんだよ!」
つい、タメ口になってしまう俺だった。
初っ端だってのに、ドッと疲れが出てくる。
俺、今日一日この人の相手できるんだろうか。
不安で仕方なかった。