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第15話 胸を支えられるのは俺だけだよ!(n回目)

 てなわけで、俺は内心ソワソワしつつ家を出て、学校へ向かった。


 隣には陽菜歌がいて、なぜか制服を着た道行く女子に敵意丸出しの視線をぶつけたりしてたけど、そこはもう触れない方向で行く。


 愛する可愛い妹には申し訳ないが、俺の頭の中は今、欅宮さんのことでいっぱいなのだ。


「よし、陽菜歌。中学校に着いたから、俺は自分の学校に行くよ。忘れ物とか、本当にないな?」


「忘れ物はないよ。仮にあったとしても、学校の前で気付いたんじゃ遅いし」


「いや、俺の持ってるものでカバーできたりとかするかもしれないだろ? ポケットティッシュにハンカチ。バンソウコウにその他もろもろ、準備万端だ」


「お兄ちゃん、もしも何かがあったりした時、友達いないのとコミュ障なのとで誰かに頼ったりできないもんね……」


 呆れた顔で言う陽菜歌。


 けれど、事実なので仕方ない。陰キャぼっちはいつだって自分一人の力で問題を解決していかなければならないのである。そこら辺にいる群れてる連中とは鍛えられ方が違うのだ。


「……まあ、そういうことだ。だからある程度なら助けになれる。大丈夫か?」


 問うと、頷きながら陽菜歌は俺の腕に抱き着いてきた。


「ん。大丈夫。ありがと。ぼっちでも、コミュ障でも、陽菜歌だけはそうやって心配してくれるお兄ちゃんの味方だからね」


「わ、わかった……! わかったから、外でしがみついてくるのはやめろ……! 周りの目もあるだろ……!? たとえ中学生でも、俺は周りからジロジロ見られるのに慣れてないし、陽菜歌も俺を彼氏かなんかだと勘違いされる……! だからやめとけって……!」


 実際、学校近くということもあり、通り過ぎていく中学生は結構いた。


 そんな中でイチャコラしてる男女実際には兄妹だががいるのだ。ジロジロと見ないわけがない。


「ヒナは全然それでもいいもんっ。なんなら、もっとくっついちゃう」


「いい加減にしろってば……!」


「あ~ん」


 さすがにふざけすぎなので、強引に離してやった。


 ったく、この妹は。朝から何を考えてやがる。


「お兄ちゃんのことだよ。ヒナはお兄ちゃんのことしか考えてませんっ!」


「俺の心の中を読むな! ……ったく、忘れ物ないんだったらもう行くからな。ちゃんと勉強するんだぞ。受験生なんだし」


「勉強は大丈夫で~す。お兄ちゃんの高校も模試の判定でA出してますので~」


「じゃあもっと上の高校目指せよ……」


 自身の長めのツインテールを両手で軽く握り、余裕全開アピールをしてくる陽菜歌。


 こんな感じだけど、勉強だけはできるんだよなこいつ……。


「まあいいや。じゃ、俺学校行くからな」


「うん。お兄ちゃん、ぼっちで寂しくなったらいつでも私に電話してきていいからね」


「しないよ。もう慣れっこだから」


「そこは『するからね、愛しい妹よ!』くらい言ってよ~」


「言いません。じゃあな」


 言って、俺たちは別れた。


 陽菜歌は俺が曲がり角を曲がって、姿が見えなくなるまで手を振って見送ってくれてた。


 なんだかんだ、俺が学校で友達無しのぼっちでいても精神的に壊れてないのは、アイツのおかげなのかもしれない。いや、かもしれないじゃなくてそうだ。


 そういう意味では感謝しなくちゃな。


 ありがとう、陽菜歌。


 本人の前では絶対に言わないけど。




〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●




それからしばらく一人で歩いて、やって来ました緊張の瞬間。


 学校に到着した俺は心臓をドキドキさせながら下駄箱で上履きに履き替え、教室へ向かう。


 教室に着き、恐る恐る中へ入ると――


 ……いた。


 いつもの自分の席に座って、真面目に教科書とにらめっこしてる欅宮さん。


 けれど、ジッと見つめてるとどことなくソワソワしてるっていうか、落ち着かない感じというか、心ここにあらずいうか。


 なんとなく目も虚ろのような気がした。


 もしかして、土曜日に俺の吐いたセリフが心底彼女を傷付けてしまったのかもしれない。


 そう考えると、居ても立っても居られなくなった。


 カバンを自分の席に下ろすことなく、俺は彼女の席へと向かう。


 ――が、


「……!? あっ、ふぁぅ……/// っっっ……!!!」ガタガタッ。タタタタッ。


「え……!?」


 俺に気付くや否や、ピューっと教室外へ逃げ去ってしまう欅宮さん。


 避けられる予想もしてはいたけど、実際にやられるとメンタルにくるなこれ。


「っ……」


 だけど、俺はそのまま彼女の後を追いかけることにした。


 一刻も早く勘違いを訂正させなきゃ。


 欅宮さんの胸を支えられるのは俺しかいないんだ!

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