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時は金なり。時魔法士になった俺の食料革命(プロローグのみ)
るいす
異世界ファンタジースローライフ
2024年08月17日
公開日
1,723文字
完結
プロローグのみのお試し投稿作品です。

時魔法という禁忌の魔法を得た主人公がその力を近い食料生産を行う物語です

人気次第では連載します。中編の予定です。よろしくお願いします。

第1話 プロローグ

「時は金なり。」




 それが俺の座右の銘だ。無駄を徹底的に排除し、効率こそが全てだと信じて疑わなかった。毎朝6時に目を覚まし、ルーティンは一分の狂いもなく進行する。歯を磨きながらニュースをチェックし、コーヒーを片手に、その日のタスクを頭の中で組み立てる。タイムマネジメントは完璧だ。無駄な雑談や突発的な予定変更など、俺の世界には存在しない。仕事では常に一歩先を見据え、最速のルートでタスクを片付け、成果を出し続けた。それが俺の誇りであり、何よりの喜びだった。




 しかし、その「効率的」な生活が、ある日突然崩壊することになった。




 その日は何も変わらない、いつも通りの朝だった。取引先との会議中だったか、帰りの電車に揺られていたのか、そのあたりの記憶は曖昧だ。だが、次に目を開けた時、俺は全く見知らぬ場所に立っていた。




「…ここは?」




 青空の下、目の前に広がるのは果てしない大草原。風が草を揺らし、空には雲ひとつない。これが夢か現実か、区別がつかなかった。頭は混乱し、体が軽く震えるのを感じた。だが、俺は慌てるわけにはいかない。こういう時こそ冷静でいなければならないと、自分に言い聞かせた。




 ――異世界転移? そんなバカな。




 一瞬そんな考えがよぎったが、非現実的すぎると打ち消した。しかし、目の前の光景は、どう見ても現実ではあり得なかった。広がる大地、清澄な空気。都会の喧騒とは対極にある、静謐な自然。そんな俺の混乱をさらに深めるように、突然、脳内に声が響いた。




「時を操る力を授ける――。」




 頭の中に飛び込んできた言葉と共に、膨大な知識が押し寄せてきた。時間を操る魔法、その使い方、そしてそれが禁忌であるという理由。まるで自分の体が知識そのものに変わってしまうかのように、時間の概念がすべて頭に流れ込んでくる。その情報量は圧倒的で、思わず片膝をついた。




「なんだ、これは…?」




 呟く俺の声は、震えていた。時間を操る? 馬鹿げた話だ。しかし、この知識が偽りではないことを本能的に悟っていた。この異常な状況、そして得た力。現実の枠を超えた、新たなルールが俺の前に展開されているのだ。




 俺はその膨大な力の一端を垣間見て、興奮を抑えきれなかった。過去を見返し、未来を変えることができる…そんな力を手に入れたのだ。俺は自分の手を見つめ、自然とほくそ笑んでいた。




「これが…時魔法か。」




 だが、禁忌という言葉が引っかかった。なぜ、この力は禁忌とされるのか? その問いが一瞬浮かんだが、すぐに気にするのをやめた。危険だろうが禁忌だろうが、俺にとってはどうでもいい。大事なのは、この力をどう活かすか、ただそれだけだ。




 その時、俺は急激な空腹感に襲われた。目の前の大地には、食料があるようには見えない。水もなければ、人影もない。異世界転移において、食料や水を確保することが最優先事項だと、すぐに理解した。




 ふと、目に入ったのは一本の木。枝にはいくつかの小さな果実がぶら下がっている。これしかない。




 俺は無意識のうちに、手をかざし、頭の中に浮かんだ魔法の言葉を口にしていた。




「時よ、進め――。」




 すると、手のひらから淡い光が木に向かって広がり、果実に浸透していくのが見えた。瞬く間に果実は膨らみ、赤く熟していく。その成長は信じられないほど早く、数秒で完熟の状態に達した。




「本当に…成長した。」




 驚きの声を上げる暇もなく、俺はその果実をもぎ取り、勢いよくかぶりついた。甘く、濃厚な果汁が口いっぱいに広がり、今まで味わったことのない美味さだった。こんなに簡単に食料を手に入れられるなんて…これこそ、俺が求めていた効率だ。




「時は金なり、か。」




 俺は新たに得た力を見つめ、笑みを浮かべた。時間を操り、食料を無限に手に入れる。それができれば、この異世界でも俺は生き延びられる。いや、それ以上に…もっと効率よく、もっと大きなことを成し遂げられるはずだ。




「さて、次は何を成長させようか。」




 この新たな世界で、俺は新たな目標を掲げる。食料問題など、俺にとってはもはや障害ではない。この時魔法の力を使い、異世界での食料革命を成し遂げる。それこそ、俺に与えられた最大の効率的行動だ。




 俺の異世界での生活は、こうして静かに、そして力強く始まった。

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