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第29話 <幕間>あたし、山田くんを好きんなってよかった。

 その日の夜、あたしはお父さんと、いっぱいいっぱいお話しした。




 何年ぶりやろか? こんなにお父さんに自分のこと喋ったのは。




 お父さんはときどき反論をしてきたけれど……。




 でも最終的には分かってくれた。




 あたしがいま山田君を好きになって。




 そして、すごく幸せなんだってことを。








 …………。




 なんか恥ずかしくなってきたっちゃけど。




 えろう不思議。ちょっと前まであたし、山田くんのことを意識なんかしとらんかったのに。




 そらもう、朝から晩までとんこつの事ばっかり考えよったけんね。




 ……いや、いまでもだいぶん考えよる気もするけれど。




 きっかけは本当に、ささいなことやったよね。




 クラスの男子に告白されて、ちょっと嫌な感じになりよったところを山田くんが助けてくれて。




 えへへ、あのときの山田くん、いま思い出してもやっぱりかっこよかったとよ。もう好き。すきすきすき。考えるだけでニコニコできる。




 やけんあたし、しっかり告白したっちゃけん。




 二次元派の山田くんには、ふられてしもうたけど。




 ……でも、でもでも!




 あたしはやっぱり諦めきれん!




 やけん二次元に宣戦布告して、絶対あたしのほうが魅力的な女やけんってアピールしたっ! あたし、頑張ったっ!




 その甲斐はあったよね? 少しはあたしの気持ちとか、伝わりよったんよね?




 だから、くさ。……山田くんだってまんざらやないけん、あたしのこと、デートに誘ってくれたんかなあって、いま思いよる。




 学校何日も欠席したら、あかりちゃんと石川さん付きやけど、家まで来てくれたし。




 嫌いな人やったらそんなことせんもんね。




 あたしの気持ち、少しぐらいは山田くんに通じたって思っていいとよね。




 そうだとしたら……




 えへへへへ……。




 にへらにへら。




 思わず笑いがこぼれてくるとよ。




 山田くん。




 あたし、山田くんを好きんなってよかった。




 ゲームとか、自分の知らん世界も知ることができたし、あかりちゃんとか石川さんとか、東京で女の子の友達もできたし。お父さんとも久しぶりにたくさん話せたし。……それも全部、山田くんを好きんなったのが始まりやったね。




 山田くん、あたしこれからも絶対、山田くんに気持ち伝え続けていくけんね。




 二次元よりも何よりも、カンナが大切だ。カンナのこと好きって言ってもらえるように頑張るけんね!




 山田くん。




 好いとうよ。




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