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第15話 <幕間>福岡っ子、純情

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【日野さんって、最近、学校をよく休むよね。なにかあったの?】


【あはは。ち、ちょっと事情があるの。心配かけてごめんね……?】


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 あたしは家に帰ってきた。




 それから自分の部屋にあるテレビにゲーム機を繋げて、『スクメモ』をプレイしよった。




 コントローラーを操作しながら、ゲームの中の山田くんを操作する。




 ゲームの世界とはいえ、山田くんが他の女の子とお話ししよるの、すごく複雑やけど。




 だって、蜂楽屋神奈ほうらくやかんなって名前の男の子、やっぱりちょーっと、おかしいかなって思うて。




 お父さんの名前、入れようかとも思うたけど、それもやっぱり嫌やん。




 高校生の女の子と恋愛するお父さんとか。……うげ。見るに耐えんし。




「…………」




 こうしてゲームをプレイしよったら……。




 どうしても、思い出してしまう。




 夕方、ゲームショップで、山田くんに。




「胸……触られたし……」




 ……あああああああああああああああああ!




 思い返すだけで、真っ赤になるやん!? やんやんやん!?




 ま、まさかあんなことされるとは思わんで、ふいうちやったし。




 背中押されよったら、たぶん手が滑ってんやろうけど、こう、むにゅん、って……。




 嫌やない。ぜんぜん嫌やないけど。山田くんやけん、そらよかけれど。




 …………。




 山田くんの指、太かった。




 男の子、やね……。




 うう、もう、思い出したらほんとに恥ずかしかぁ……。




「でも山田くん、少しはあたしのこと、女として見てくれとるんやろうか」




 それなら、嬉しい。




 でも、でもでも、どうやろ。




 あー、いけん。ゲームの内容が頭に入ってこんし。




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【わたし、真剣に悩んでるんだ。山田くんはどう思う? 学校を休んででも、体調を優先したほうがいいと思う?】


→【自分のことは自分で考えるがいい。俺様にはどうでもいいことだ】


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 ぴこん。




「あ! しくじった! 選択肢、適当に選んでしもうた!」




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【山田くん、冷たいね。分かった。自分で考えるから。……迷惑みたいだから、もう話しかけないことにするね。さよなら】


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 え?




 え、え、え。




 なんなん、これ。




 ヒカリがすっごい悲しそうな顔でどっか行きよるけど。




 あ、あとでまた会えるよね? そうよね?




 もう。ちょっとボケーっとしとったらこれやし。




「はあ……」




 でもやっぱりあたしの頭は、山田くんのことばっかり考えよった。




 あ、ゲームやなくて現実の山田くんね。……山田くん。あたしのこと、少しは好きになる可能性出てきたんかなあ?




 そういえば、あのゲームショップの女の子。




 あかりちゃん、やったっけ。あの子、すっごい可愛かったし。




 カンやけど、あの子はたぶんあたしと同じ。山田くんのことが好きで、それも、山田くんのいいところ、分かっとうと思う。




 あぶない。あぶなかよ。まさか三次元にライバルがおるなんて。




 可愛いうえに、山田くんとはゲームっていう共通の話題まであるし。




 なんとかせないかんけど。……どげんしよ。




「カンナー、まだ起きとるんかあ! 夜になったらちゃんと寝らな、つまらんぞ!」




 そのとき、部屋の外からお父さんの声がした。




 午後11時半。こんな時間まで仕事をしてきたお父さん。




 やけどたぶん、これから家の中でも書類とか作るんやと思う。去年、東京に来てからずっとそんな感じやし。




「はーい、もう寝るしー!」




 あたしはそう返事したけれど、でも『スクールメモリアル』、キリのいいところまでやろうと思った。




 山田くんと、話合わせたいし。ヒカリに勝ちたいし。




 あの、あかりちゃんって子と同じくらいゲームにも詳しくなりたいし……。




「でもヒカリ、全然出てこんねえ。なんでやろ?」




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 こうして俺は高校を卒業した。


 日野ヒカリさんとは、あれ以来、ついに話すことはなく……。

 風の噂で、彼女が遠いところにある病院に入って、闘病中だと聞いた。

 そんなに重い病気だったなら、もっと真剣に話を聞いてやればよかったな。


 もうなにもかも遅い。ひま姉とも最近は疎遠だし、俺の卒業を祝ってくれるひとは誰もいない。ひとりさみしく、自宅で空を見上げていた……。




 BAD END




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「え? ……え? え? えーーーーーーーーー!?」




 ゲーム、終わってしもうた!




 な、なんでよ!? あたし、そげん悪いことばしたと!?




「おいカンナ、うるさかぞ。はよう寝らんや!」




「ああん、もう、寝とる場合やなかったい! こっちもいま大変なんよー!」




 お父さんの怒鳴り声に対して、あたしも叫び返した。




『スクメモ』は、ゲームの最初に戻ってしもうた。




 これがゲームオーバーってやつなん?




 うう……これが初ゲームの洗礼なん?




 ゲームは難しかよ、山田くん!!




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