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第4話 <幕間>博多弁でも恋がしたい

 ――山田くん。あのくさ、あ……明日から、ふたりのときは、あたしのこと、下の名前で呼んでくれる?




 ちがう!


 そんなこと、言うつもりやなかったとに!


 あたし、蜂楽屋神奈は、早足で家に向かいながら、さっきのセリフを猛反省しよった。


 ……そら、下の名前で呼んでほしいけど。最後に、山田くんから「カンナ」って呼ばれたとき、もうめちゃくちゃ幸せで、空まで飛べそうなくらい舞い上がったけど!




 でも!




 ちがう!




 あたし、本当は、




 ――山田くん。あのくさ、あたし……あんたのことば、きんなったよ?




 そう言いたかったとに!




 自分でも分かるくらい、顔が真っ赤になりながら、あたしはなお歩く。


 というより、走る! もう恥ずかしくて恥ずかしくて心臓がバックバック言いよるけど、それでも走る!!




「好きんなった、ごたる……」




 山田俊明くん。


 1か月前に高校に入学して、同じクラスになったけど、顔と名前くらいしか知らなかった、彼。


 やけど、あたしがあの佐藤とかいうひとに絡まれて、困っとったときに助けてくれて。……博多弁も馬鹿にせんで。ラーメン屋のこともネットで調べてくれて。……すっごく優しかった。嬉しかった。……気が付いたらあたし、かあっーって、顔やら胸やらがもう、のぼせて、のぼせて――




 初めての経験やん。




 恋って、こういう気持ちになるんやね。




 初恋、やん……。




「どげんしよ……」




 山田くんに、告白したい。

 あたしを、山田くんの彼女にしてほしい。

 やけど、どうすればいいっちゃろ? あたしみたいな博多弁女、山田くんは好きになってくれるやろうか……?




「山田くん……」




 明日、学校にいったとき、どうしたらいいんやろ。

 山田くんは、あたしと話ばしてくれるやろか。山田くんは、あたしとまたふたりきりになってくれるやろか。




「お櫛田くしださん……あたし、どげんしたらよかとね……?」




 地元、博多の守り神である櫛田神社の景色を思い浮かべながら、あたしは星の無い夜空を見上げた。




 吹きつける夜風はちょっとだけ冷たかったけど、身体はもう、ぽっかぽっかに火照ほてりまくっとった。

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