――山田くん。あのくさ、あ……明日から、ふたりのときは、あたしのこと、下の名前で呼んでくれる?
ちがう!
そんなこと、言うつもりやなかったとに!
あたし、蜂楽屋神奈は、早足で家に向かいながら、さっきのセリフを猛反省しよった。
……そら、下の名前で呼んでほしいけど。最後に、山田くんから「カンナ」って呼ばれたとき、もうめちゃくちゃ幸せで、空まで飛べそうなくらい舞い上がったけど!
でも!
ちがう!
あたし、本当は、
――山田くん。あのくさ、あたし……あんたのことば、
そう言いたかったとに!
自分でも分かるくらい、顔が真っ赤になりながら、あたしはなお歩く。
というより、走る! もう恥ずかしくて恥ずかしくて心臓がバックバック言いよるけど、それでも走る!!
「好きんなった、ごたる……」
山田俊明くん。
1か月前に高校に入学して、同じクラスになったけど、顔と名前くらいしか知らなかった、彼。
やけど、あたしがあの佐藤とかいうひとに絡まれて、困っとったときに助けてくれて。……博多弁も馬鹿にせんで。ラーメン屋のこともネットで調べてくれて。……すっごく優しかった。嬉しかった。……気が付いたらあたし、かあっーって、顔やら胸やらがもう、のぼせて、のぼせて――
初めての経験やん。
恋って、こういう気持ちになるんやね。
初恋、やん……。
「どげんしよ……」
山田くんに、告白したい。
あたしを、山田くんの彼女にしてほしい。
やけど、どうすればいいっちゃろ? あたしみたいな博多弁女、山田くんは好きになってくれるやろうか……?
「山田くん……」
明日、学校にいったとき、どうしたらいいんやろ。
山田くんは、あたしと話ばしてくれるやろか。山田くんは、あたしとまたふたりきりになってくれるやろか。
「お
地元、博多の守り神である櫛田神社の景色を思い浮かべながら、あたしは星の無い夜空を見上げた。
吹きつける夜風はちょっとだけ冷たかったけど、身体はもう、ぽっかぽっかに