ベッドに横になり、ため息をつく。
(はぁ~わたしって、ダメな子かしら……)
今日の出来事一つ一つを思い返すたび、霞は絶望を感じた。自信過剰だったのだ、彼らに会うまでは。元よりあの子たちが良助を超える天才だ、ということはデータから見ても明らかだった。だから逆に彼らが普通の人間ではないというイメージが霞にはあった。「きっと自分たちとは違う生き物なのだ」と心の底で思っていたのだ。
ところがいざ会って話してみると、そこはやはり年下の子たちで、むしろ自分なんかよりもずっと人間らしく、逆に自分の方がサイボーグのように思え、言いわけのしようがなくなってしまったのだ。結果的には接触する名目を作り、彼らの素性を解き明かしていこうとしていた霞の思惑通りに進んだものの、意識レベルでは彼らにその想定を軽く上回られたことがさらにショックだった。
(嫌だな。明日行きたくないな……)
そう思った時、端末にメッセージが入った。西崎司からだ。
『高橋さんにお伝えしたいことがあります。以前お会いした橋で、明日の午後3時半にお会いできませんか?』
それを見た霞はベッドの上で仰向けに転がった。
(西崎さん、か。そういえば去年会った時は、失礼なことしたな。謝らないと……。となると明日の勉強会、行けないな。言い出しっぺなのに。でもやっぱり会わないと……)
結局西崎に会う方向に霞の気持ちは傾いた。本来の自分であれば二つ返事で了解することはないはずだとも思っていた。それだけ自分が落ち込んでいるということかもしれない、と、なんとなく自覚していた。
◆◇◆
「ごめん、急用で行けなくなっちゃった」
翌日、良助の部屋で手を合わせ、勉強会を休むことを伝えた。
「本当か?」
「本当よ。中学生にはいろいろとあるのよ。明日は絶対行くから今日の話聞いてきて。で、後でわたしに教えて」
「行きたくないだけなんじゃねーの?」
「あのねー、わたしにだって責任感はありますからね。けど今日はどうしても無理なのよ」
「わかった、オレ一人で行ってくる」
なんとか良助に了承させて自宅に戻ると、今度は京子に西崎のことを伝える。
「会いに行くの?」
「うん、行ってくる。前に失礼なことも言っちゃったし」
「気をつけてね。もう一般人とはいえ、以前は組織の人間で、ターゲットに入ってたくらいだから、いろいろなパターンに備えておくのよ」
「それは自分でもわかってるつもり」
そう言って霞は出かけていった。入れ替わりで聡が部屋から出てくる。
振り返った京子が意見をうかがった。
「西崎くんが霞に話す内容って、やっぱり……」
「そりゃ尾崎誠の事件のことだと思うよ。あれって
「実はかなりの部分まで特定できてるんだけど、決定的な証拠がないのよ」
「やっぱり内部の人間?」
「おそらく」
「そうか……」
聡も腕を組んで考え込んだ。