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0012 隠されていた映像

「もう気が付いていると思いますが、ザブの犯行がわからないように、画像を細工したのは私です。身内の恥を隠したくてそうしたのですが、こんなにあっさりバレてしまうとは……」


「はあ」


「許して下さい、ザブは不幸な子なんです。子供の頃、幼くして両親を亡くした話しはしましたよね。両親を失ったザブは引き取り手が誰もいなくて、家庭の温かさを知らずに育ちました」


安崎さんは私をチラリと見ると、ウーロン茶を口に運びました。


「そして、中学を卒業すると家出をしましてね。でも、誰も探すものもいなかったんです。そして空き巣をしている所を警察に捕まって、再会したのですよ。その後も悪い仲間と手を切れず……」


「そうですか」


私は、少しザブさんに同情していました。


「それが先日、映像配信の仕事をすると言って尋ねて来たのです。私は、嬉しくなりましてね、準備費用を全部出してやりました。今度こそ真面目に働くと、思っていたものですから」


「わかります」


「私は、映像編集会社を運営していたので、ザブの映像の編集を手伝っていたのです。そしたら廃墟を荒らす映像、そして自宅での尋常では無い怪現象です」


「それで私に」


「はい。知人の紹介で映像を見てもらって、どれだけこの映像のことがわかるのか試しました。驚きました。私が、必死でわからないようにした細工を、いきなり言い当てられました。何か隠していますよね。と、」


「おめがねに、かなったと言うわけですか」


「ははは、そうです」


「あまり良い気分がしませんけど……」


「先生! 先生の目から見て他に何か気が付いていることはありますか」


このタイミングで先生と言われたら、せっかく気分を悪くしていたのに、悪い気分が吹っ飛んでしまいます。


「まずは、あの廃墟にいた髪の長い少女がまだ、あの部屋にいます」


「しょ、少女……」


私が少女といった瞬間、安崎さんの顔色が変わり、唇が小刻みに震えました。


「そういえば、あの白いぬいぐるみはどうしたのですか」


「あー、あれですか。廃墟から持ってきたものは、全部売ったと言っていたのですが、あれだけなぜか買い戻したようですね」


今度は、私が青ざめました。

ザブさんの意志でおこなった、行動では無いということでしょうか。

あれは、少女のお気に入りなのでは無いかと、直感でそう感じました。


「あのー、小さな鏡がありましたよね」


私は、言い知れない恐怖で、全身に寒気が走りました。

何かがおかしい。

私は、また違和感を覚えています。

いったい、何がおかしいのでしょうか。わからないから、余計に恐いのです。


「わかりませんねえ」


私は机の上のノートパソコンに映像を出しました。

チェストの上の小さな鏡。


「これです」


「あー―、これですか」


安崎さんは少し上を見上げて、何かを思い出したようです。


「そういえば、全部車から荷物を下ろした後に、車の中に残っていたものがあったといっていました。二階の机の引き出しにあった物とか言っていたような気がします。それじゃ無いでしょうか」


あー、まただ全身に悪寒が走ります。

私の直感が危険信号を出しています。


「あのー、ザブさんが異常な行動を取らないように、しっかり見て上げて下さい。なにか不自然な行動を起こすかもしれません」


私はこの時、何かの異変を感じていたのかもしれません。

でもそれが何だかわかりません。


「は、はあ」


安崎さんは気のない返事をしました。

病院にいるのだから、大丈夫と言うことでしょうか。

私も具体的に何が起るとも言えないので、これ以上は言えませんでした。

まあ、病院にいるのだから大丈夫でしょう。そう言い聞かせました。


私は、安崎さんと別れると急いで自宅に帰りました。

それは今日、安崎さんと話をして感じた違和感の原因を知る為です。

部屋に入ると、パソコンが立ち上がるのが、いらいらするほど遅く感じられました。

パソコンが立ち上がると、三枚目のディスクをセットして画面が出るのを待ちます。

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