こんなに世界が
おれには
鍾乳洞の探検を終え
晴れて
ちりばめられた宝石の数々を
ひとつひとつ名前を
読みあげていくには
多すぎて
どんなに
おれには
挑戦者たちのナレノハテ
記念碑 無言の
その胸きらめく
おれには暗くてたまんねぇょ
ちりばめられた美女の微笑みに
ひとりひとり名前を
呼びかけていくには
多すぎる
盛大な拍手で包んでいたのは
滅びのパントマイム
見たくないものを見てしまったら
どんな顔
聞きたくない話を聞いてしまったら
なにもなかったようにふるまうなんてムリ
なのに
なにもなかったかのようにふるまう群れ
そんな場所に私がいられるわけがない
歓迎ムードは義理の延長線上ギリギリの
ひとり
おれは手をとった
素敵なドレスだね
この世のものとは思えない
すきとおった肌は
うかつに許せば酔いがまわる
おれの手に感じる
対比的かつ同義的で反重力と等価的な体温
ご迷惑でしょうか
あなたは私に
その役目を終えてください
いまこの瞬間から
さあ
あなたを囲む
世間の毒から
私の街へ
あなたの髪をとめていたバレッタが
ほのかに風に
やがて私の農園で夏草の香りに変わるでしょう
言いなりの命
これからは
私のために役立てていただくよ
それはつまり
あなたはあなたを生きるという意味
あなたがあなたで決めるひとつひとつ
そのエリアに私が存在できたら
このうえなく喜ばしいので
あなたがあなたを生きることを
私に与えられた権力の名のもとに
命じました
なにもかもお
絹が隠し続けた
殻の向こうに眠る
壊さぬように
呼びかける命
貴族の
細めなリボンほどいてするり
あなたの人生まるごと
どうすれば
どのように
各地を転戦
生き抜いてきた
正当に評価できるのは
自分だけ
紙を置き
石を包み
扉を閉める
あけたカーテン
ひらく
さみだれ天気雨のように
くちびると息
ふるえるよ
あなたのリフトに
私がはいれば
初夏のまま
シアンブルー
どんなに世界が
おれには暗くてわからない
だから酸素を求めよう
潮の香りは
こっち
こっち
こっちだよ と
どっち
どっち
どっちなの と
あなたの問いに
目と目が合う
答えないまま