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第163話 空気が濁る

背が伸びるとき痛いらしいよ

眠っているあいだ突貫工事で

ガンガン骨を延長していくらしい


そのための資材がカルシウムだから

牛乳を飲みなさい

と言われた


小学校の給食のときから牛乳が苦手だった

ぬるっとしてぽわっとする

でも

自宅の冷蔵庫で冷やしてある牛乳なら飲める

常温が苦手なのかもしれない


常温が苦手なのは

自然でなく不自然なことだ

恥じを知れ

というような説教を喰らったのは

五年生のときだったかな


こういうのがある

簡単だけれど

すごく栄養バランスがいいらしい

父が説明しながら準備したのが

シリアル


冷たい牛乳をかけて食べる


その食事は美味しかった

美味しかったけれど

「おいしい」と言ったら

「なにそれ。いつも食事ちゃんと作ってるおかあさんへの当てつけ?」

と母が不機嫌になった

「そういうことを言ってるんじゃないよ、おかあさま。

 バランスよく整ってる、しかも簡単に食べられる。

 それだけのことよ」

 姉が説明すると、

「どうせおかあさんは…」

と不服そうにひとりごとを始めてしまった


シリアルは日曜日の朝だけ

という決まりになった

そのため

さっさと朝ごはんを済ませたい父と姉が

「なあ、たのむよ」

「ねえ、おねがい」

と懇願して

ケースバイケースに


ふと思う

早起きして朝から食事の準備が大変ならば

手わけすればいいのに

おれだって手伝えるのに


すると

「なに言ってんの、あんたたちは勉強するのが仕事でしょ。

 わたしの手伝いしようなんて思うくらいなら、

 早起きして勉強なさい。

 料理なんて大人になってから覚えればいいの!」


おれは心の中で唱えた

もう大人だよ

だって中学生だぜ?

でも声に出さなかった

言えば空気がにごるもんね


そしてだんだんと言いたいことを言えなくなっていく?

なぜかふと そんな気がしてしまった



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