彼女を家まで送って帰り道ひとり
ほんとうの帰り道
彼女の家の門の手前で手を振って
その背中を眺める時間
玄関のドアあいたら
ちょっとだけ振り向いてくれるのが嬉しくて
おれは少し涼しい顔になる
ひとりきり帰り道
彼女の姿を思い浮かべ空気ひんやり
仲よくなれて嬉しい
仲よくなれて喜ばしい
知識が増える
会話が消える
笑顔が残る
落ち着いていられるけど
いてもたってもいられなくなる
不思議
おれは少しやっぱへんになった
古い区割りの住宅地
せせらぎの音だけ気配を知らせる
ところどころ闇が深い
空家みたいに静まる屋敷
育ちすぎて怪物じみた庭木があるけど
まだ名前を知らないまま
いつも見ているけれど
あのスカーフの結び方ちっともわからない
いつも見えないけれど
どんな刺繍が織り込まれているのか
ちょっと気になる
旬の果実を季節ごとに描いて
こんな詩集を刷り込ませて売りたい
いきばのない夢この絵空事
どうでもいいのに
どうでもよくない
どうでもいいから
どうでもよくなく
また
声を聞きたくなってしまうのは
なぜなんだろう
ぎりぎり深夜にならない時刻の
なんとか風呂あがりくらいの
リラックスタイム
そのまま復習や予習で机に向かうだろうけれど?
「やあ」
「着いたよ」
「おかえり」
「ただいま?」
なんかへんな会話の電話
料金気にして約三十秒ほどの
せわしないのに
ゆるやかすぎて
また
また
息がかからないのに
とてもとてもとてもとても近い
近い声
ダイレクトに耳にはいってくる
おれのなかにはいってくる声
その声 声 声 きみの声
とてつもなくとてつもない女の子
の声
またな
またね
深夜となりの駐車場バタン大きな音のドアひびく