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第155話 オミトオシ

その扉から中は見えず

秘密のアジトみたいな顔


ふりかえれば

地上が高くて

おりてきたな~感が強い


カリキュラムは綿密に組まれていて

初心者向けというよりも

予備校慣れした生徒たち向けな雰囲気

けれども少人数制をうたっているので

かなり余白もある感じ


先生から教わるだけ というより

生徒同士で教えあえる 

そんな余白が見えてくる


てっきりもっと生徒が多いのかと思ったけれど

「高校受験には早いでしょ?」

「いや、おれら中学受験で三年前でも遅いと言われた」

「それとは話がちがうよ」

「なにがどうちがうって?」

「だってさぁ?」



中学受験は受験者数そのものの人数が限られてるから

奪い合いなのよ予備校は

つなぎとめるため確保するために

計算にもとづいてあおられたのよ


でも高校受験はみんながする勢いだし

譲り合っていいくらい余裕なのよ予備校も

だって ほっといたって必ず来てくれるから

みたいな



「すごいね」おれは率直に言う「そんなことまでオミトオシなのか」


「すごくないよ」彼女は言う「わたしたちが乗り越えてきただけよ」


わたしたち?

「ん?」おれは自分で自分を指さしてみる

「ん!」彼女は自分自身とおれを交互に指さす



ライトアップされていた噴水が

冷たい水蒸気を飛ばしていた


ふと思う

この気持ちを

どうすればいい


喜んでいい?


どうすればいい

この気持ち

ふと




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