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第153話 春を先取り

きりかわり


昨日と今日


別世界


ガラリと?



むしろ なにも かわっていない


いつもと同じような空気


理論的に説明を試みるなら


酸素を吸い 二酸化炭素を吐く


でも


こればかりは


どうしようもない


その変化を目にして


おれは


『切符は大人料金』


と心で唱える


聞いていたし


理解していた


けれども


いま ようやく納得





「桜、まだみたいだね」


約束の時間なんて最初からなかったみたいに遅れてきたきみが言った


あんなに冷たい風ふわり吹いていたのに


セーラー服は一瞬だけ静止画像になった


だから おれの反応も 固まってしまったんだよ





その長さなら


潮風あおられても


大丈夫だろう


なんて考えたとき


ヒュッ


ヒット曲の効果音みたく耳をよぎって


カーテンがバタついた


惑星の輪っかみたいに広がり舞う


見えた色


判断できずに


おれは目を合わせて



「来週あたりじゃん?」




山の尾根は枝模様


線路沿いも似た感じ


きみの制服だけ春を先取りしたみたいに


まぶしい







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