たまたま
たまたまだと思う
そう思うけど
ぼくは
よく
あんなに高いところ
眺めのいいところ
とにかく展望台を目指していたのに
いまいちばん自然なのは
地下へと続く階段の先にある空間
それは閉ざされている
どこか満たされている
きっと隠れたいのかも
街ゆくひとたちの視線からも逃げて
気の合う相手とだけ過ごす時間
ピアノが流れる喫茶店
レコードを視聴できる楽器店
少人数制の学習塾
どれもが居心地良くて
どれもが地下だった
あんなに怖かったのに
地階へおりていく階段
いまでは
うきうき模様で
階段ひとつ
おりていくのが
うれしくてしかたないんだ
でもいちばんの楽しみは
ひとりの時間に
思う存分に空想にひたることかもしれない
胸の奥に深い空間があって
どんどん広がっている