「ここって…カフェ?」
「だから最初にそうじゃないのかって話」したじゃんか?
「うそ。パン屋って…」
いらっしゃいませ
姿はなくても声がした
おれたちに対してだよね?
ちょっとココ変わった建物でね
向こう側がパン屋
こちらは自家焙煎コーヒーの店
上からおりてきたんだね
メニューを眺めてもわからないので
ちょっと声に出して読んでみた
しっくりきたのがケニアだった
「味、ちがうんですか?」
「そりゃあねもう」
「どれも美味しそうですね」
「あっさりしたのが好みか、にがいほうがいいか。
どっちがいいとか、ある?」
「濃いのが…」
「へえ?」
「すみません、よく知らなくて」
「いいさ。で?」
カウンターの向こうから視線を向けられて
「おなじのを」と彼女
「おなじのでいいの?」
「おなじのがいいです」
コーヒー豆って削るのか?
「
「くわしいね」なんだよ、だったら教えてくれよ
「どうかな?」と彼女
「どうかな?」おれが聞き返すと
「うん」ニヤっとしてからまた「どうかな」
財布との相談もせずに
迷い込んだだけのくせに
さも
とおりすぎるだけのつもりで
「いらっしゃいませ」でつかまって
『いらっしゃいました?』の顔をしてしまう
インスタントコーヒーとアメリカンしか知らないと思う
けど
あきらかに なにかが ちがう
この香り
この空気
にがそうなのに
あまくひろがった
あれ?
眠くなりそうだよ
コーヒー飲むと目が醒めるんじゃなかったっけ
「
そうなんですかズズっ
「濃密で苦味も強くてミルクが合うので、そのまんまだとリラックスできます」
そうですねズズッ言われてみればというかなんていうか
ズズっ ズー
は!?
音をたてて飲んでしまった
ヤバイかなヤバイよな
と隣の彼女をチラリすると
フーフーフーと息を吐き続けていて
あ
くちびる
次の瞬間
ズズズズーっ