「ところでさ、これってなに?」
「これって? って、ちょ、ゃ」
いきなり腕をまくられて
まさかの展開あらわになった
おれの素肌
しっかり椿油たっぷり塗っておいたのに
もう乾燥してカッサカサだな
って、ちょ
「もう喧嘩しないって言ってなかったけ?」
言ったけど
「もう殴らないんでしょ?」
それは そうだけど
「どうなったらこうなるの?」
おれには吐息の時間は許されないようだ
しらばっくれてもいいだろうけど
どうせだから説明しよう
「むなぐらつかまれた」
「え」
「なぐってないよ」
「え」
「なぐられても、いない」
「ん」
「よけただけ」
「それでこれ?」
「まだ下手なんだよ、だからだよ。でも大丈夫」
「大丈夫ってなにが」
「もうコツつかめたから。わかったから。もう大丈夫です」
「だから意味わかんないんだけど?」
「だから大丈夫ってことだよ!」
「だから…なんでそんなに自信たっぷりなのさ」
「そんなことは」ないと思うけど、もしもしそう見えているのならそれはそれで都合がいい、
「きみのおかげさ」
真相というほどではないが
嘘というわけでもなく
おおげさにも思えなくもないが
ひとことで済ますには丁度いい
なにかがちがう
なにかがかわる
そんな予感を覚えるたびに
裏切られてきた気もするけど
どんな予感も
どっちかなんだ
半信半疑じゃないよ
五分五分でもなく
百パーセントと百パーセント
流されそうになるとき
かろうじて石にかじりつく
砕けそうになるたび
かろうじて意志が堅ければ
目の前サーって人が
それはパレードではないけれど
決して歓迎ムードでもないしな
こまかいこと気にするな
いい気になれよ
いい気になれば
宇宙からの祝福を感じ取れるから
内申書を気にして
怒りの言葉ひとつ声にしなかったことがある
あの日々を思えば
なんて自由だ
なんて自在だ
なんて平和だ
だからもう勘弁してくれないか
知ってるだろう?
細胞は常に生まれ変わり続けて
遺伝子情報を設計図にしつつ
後天的意思に沿って再生産されるんだってさ
つまり
おれたちは自分のまま自分になれる
やがて
おれときみの関係も
これまでどおり
いままでのまま
あたらしくなる