目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第137話 容赦

どくどくどくどく


         血管やばっ




この衝撃に耐え切れるのか

そんなの知ったこっちゃないけど


さんざん言われたことです

あなたは欠陥品

ひどいよそんな

ココロない言葉

そっちこそ と思う

そっちこそ と叫ぶ


どっちも どっち

それもイヤだ

悔しくて悔しくて ただもう悔しくて

風に吹かれて眠りたい



どうぞこのまま召してくださいませ

この世界に必要とされていないみたいだし

いつまでも迷惑ばかりかけたくないのも本音です



って思ってた


って感じてた


っていうの全部まるごと



撤回させていただきます




ドクドクドクっと毒だとしても

どくどくどくどく あふれて止まらない

まっしろな自分の分身


のけぞるような反応

そっぽ向かれて視線の先に宇宙が見える

やわらかく握られて

ゆるやかに締めつけられた

真綿まわたでグルッと見えなくされる

ふっかふかにふさがれた耳で

精一杯の注意力

ありったけの洞察力

くりだせ

つぎこめ

ありとあらゆる限界ばかりと思ってきたけど

なあんだ あるじゃん

おれの居場所

きっとここ

だからもう絶対もう絶対もう絶対に



最寄駅のプラットホーム

たむろしてるブラット濃霧

にやにやされて

シャドーボクシングのシルエット

なにそれ威嚇のつもり?

どけよ おまえら

いいから どけよ


この世界はおまえだけのものじゃないって

どうせ言ってもわからないんだろ

どけといったろ 聞こえないのか


正面衝突

かつては友と認めた気がするけど

向こうはどうだったかしらないし

いまとなっては どうでもいいし

けれども ふと 思うんだ


なあ おまえも迷っているだけなんじゃないの

遊園地のツクリモノとちがって現実の迷宮は

なにもかも見通せて

どこまでも眩しくて

可能な限りの自由で

自己責任の雨が降る


むなぐらつかまれたけど平気

だって ほら

師匠に教わった

まずは左手を こう

てのひらひらいて

次に右手を こう

くぐらせてから

手と手を結ぶ

さあ決壊の一歩だよ


えいっ


こんなにビビッて 情けないけど

どんなにジワって あふれてもな

しっかり身につけた技があるんだ


えいっ



はばをきかせたヤツラの群れを倒せもしないで

そりゃあ話にならない弱さで立ち向かうけれど

見てみ

皆よ

おれの前に道ができた


たったひとり

たいしたことない

いきがってみても

うしろ指さされまくるだろう


いつものことさ

ちょっとちがうけど


カバンを手で持つのをやめただけ

両手が使えればいいだけのこと


これっぽっちの声も出さず

気合のひとつも見せないままで

ゆっくり動いた

じっくり眺めた

にじんで歪みかけたけど



からだが覚えたことは

ちゃんと自然に反応できる

からだで覚えたことは

無意識だろうと反射的に

必要最小限の動きで

なにもかもを制圧してしまった



半信半疑って

半分といいつつ

疑っている

ごめんよ

いまならわかる


疑うのなら全力で疑うがいい

信じるときは全力で信じぬくんだ


おまえの全身全霊を

その弱々しき両手にこめてやれ





パレードの時間です

さして華やかさはないけれど


あれれ

って顔で

視線ちょっとらしちゃった

おれ 照れてるのかな

おれ 恥ずかしいのか

おれ おれがわからず

あれれ

って顔のまま

一歩また一歩また一歩またまた一歩




言いたいように言えばいいさ

商店街に流れる歌詞みたいなもの


うしろ指でも陰口でも

お好きにどうぞ


自分の罪なら知っている

それを承知で生きている

だから もう


容赦なんてしないんだからね


笑えないのに笑いたくて

笑えないまま片腹かたはらいた

そうさ もう


容赦なんてしないんだからね




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?