なんとなくわかってきた
ここは駅の裏
というより
もしもしあるなら西口だけど
改札が設けられていないから裏
丘の斜面に夏草の名残り
はいずりまわる命は静かだ
どんなに耳をすましても聞こえてこない
どんなに目をこらしても見えそうで見えない
こんなに流れているけど
まるで動いていないみたいだ
崖っぷちくりぬいた鉄筋コンクリート建築の要塞
こっちの路地からは
焼きたてのパンの香り
そっちの住宅街からは
ミニシアター
あっちの並木道からだと
自家焙煎コーヒー
春になればミモザが咲いて
いちめん緑黄色の異世界めくよ
アカシアと呼ばれて
どの花のこと
アカシアだよ知らないの
聞かれても
さて さて さて
ちゃんと見てないのかと責められてもね
春になるたび眺めにくるんだ
いまには飛び散って消えてしまいそうな
黄色い粒子が身を寄せ集めているような
そっと誰かに頼りたいとき
きっと他の誰でもない自分自身を信じてあげたくなるんだ