駅のホームから見える桜並木は
それはそれはもう見事です
列車が来るたびに風が巻き起こり
ぶわあ
ずさあ
激しく揺さぶられる枝という枝すべて
花びらを乱舞させます
いつまでも眺めていたい
そう思いつつ
いつもの列車に乗り込みます
桜吹雪の季節は短くて
あっというまに葉桜です
しかし
陽射しに透けた新緑も見事なもので
ひらっひら
きらっきら
もうすぐ夏だなという予感と
そのまえに梅雨かなという気構えがあって
それでもなお
雨あがりの虹を想像すると
やはりこれからの季節が
待ち遠しくてしかたなくなります
「あたらしくお店ができたみたいだよ」
と
ホームに立っていると背中から声
振り向くと
「寄ってみようよ?」
いつもとちがうバレッタで髪をまとめ
まだ少し眠そうな顔のきみがいた
「ひょっとしてカフェ?」
ぼくがたずねると、
「どっちかつーとパン屋さん?」
とのことで
「☕それとも紅茶どっち系?」と問えば
「抹茶?」という答…というか質問返し
ああ
なるほど
これは気づかない
看板もなにもなくて誰かの家みたいだった
「これ、ふつうにインターフォンなんじゃ?」
ぼくが指をのばすと、
「あ待って」
ぼくの指を彼女がつかむ
「聞いたの。とある流儀にもとづいて、訪問とのことって」
「流儀?」
インターフォンではなく
それよりもうちょっと上のほう
「鳥?」の置物かな
いや もしかして それ
「たぶんカメラになってる」と彼女が言う
「あの鳥の目だね」
「そう。ちなみにあの鳥の名前って知ってる?」
「さあ?」
「わたしも、こないだ初めて聞いたんだけど、実は…」
ぎぃ
扉がひらいた