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第121話 風がシャツばたつかせてる

やけに風があばれているなあ

だからといって引き返さない


おれがもしも孤立しているなら

せめておれだけでも味方でいよう


はるか眼下に列車がすべりこむ

桜並木のプラットホーム


いつか気楽になれると信じてた

ますます混濁こんだく症状だ

改善されやしない


おれにもしもチャンスがあるなら

誰かが邪魔してくるかもしれない

せめて

その誰かがおれにとって大切なひとでないように

祈るかわりに

誓った


あなたがよこしまを目覚めさせないように

あなたが猛毒の粒子を放つ花を咲かせないために


あなたが幼気いたいけな乙女でありながらも

そねむほかないはなの魔

一縷いちるのぞみにけた少女

いかなる時の流れもいやしてくれなかったのなら

そのなげきは同情の余地ばかり

でもね

だからって他のひとを追い込んでいい理由にならないよ


ぴたり風おさまって

大地からの突きあげ

まだなにか方法がある

きっとまだ方策がある

おれが知り得ていないだけで


必ずいいほうへいける

って

思えた

風にあおられても

安易に飛び立つな

風がシャツばたつかせてる

いまこそフロア

ふんばってみせるさ




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