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第117話 星屑のリクエスト

布団にもどるときも

押入れに閉じ込められるときも

泣き声なんて出さなかった

涙なんて汗みたいなもの

そう思ってた


電話で声を聞いたとき

階段を駆け登ったとき

感情なら静かなもので

飛礫つぶてを意識できやしない


涙は血液だよ

赤みがされただけ

心が傷を負って

声すら出ない

ってことらしい


そりゃあ

悪口ばかりだろう

どれも

真実なのだから

でも

誰かに打ち明けてしまったら

もっと悪いことにんりそうだ

友に相談するにしても

覚悟がいることなんだよ

だからせめて

せめて あの


声すら出ない



ケリをつけようと思った

このままじゃいけないから

ケリをつけるんだ今日こそ

このままでいいわけがない

カツーン

カツーン

ひびかせろ

迷うわけない街で

まさかの行方不明

こんなに陽射しあふれて

あんなに顔をゆがめた

せめて あの

だからせめて


声にできない



この宇宙に

この惑星に

この命に与えられた名前

おしみなく

そそがれる

そのなさけは

なにゆえに


自分だけに許された愚行だろ

他人に許せるわけがない

あらがって

さからって

あきらめて

それでもなお

目指したいものが残るなら


声で語るな


星屑だ星屑だよ星屑なんだ

流れて燃え尽きるだけの命

星屑さ星屑かよ星屑でもさ

遠くで誰かが見ているのなら

きらめいていることだろう


ぐっと飲みほせ

その言葉を

この想いを

あの嘆きも

ぜんぶ

ぜんぶ

ぜんぶだよ



展望フロアは決意表明の魔法陣

かぎりないエネルギーを

そそいでくれ


展望台の階段は吹きさらし

むかしより伸びた髪あおられて

結ぶ


くちびる

かみしめそうになった

ふるえる

意味不明の反応

試しに叫んでみた

リクエストを申し込むみたいに

それは ひとこと

たった ひとこと

ほんのひとことしか託せない

うらはら

うらはら


ありがとう

ありがとうございます

この命を

ありがとう

ありがとうございます

がれきの道を

自分の足で歩けるまでに

実った果実もぎとる

自分の手で

それだけでじゅうぶん

これだけでいい

欲張りすぎた

あとは おれが おれであれ

のこる なにか おれであれ

いのる なにを

ただ見守ってくれればいいだけのこと


余計なお世話を焼かれて

過剰な指示でつぶされる

苛酷な試練でもないのに

日々の愛が怖くなるけど

感謝を選んだ

感謝を選んでみた

理由を問われても知ったことか

さんざん傷ついたこの心が

感謝を選んでいた


ありがとう


この強さを

したたかな

この強みを

したたかに

この強さで

だから泣いてる場合なんかじゃねえ


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