しっかり見ているし見えているのに
見失ってしまうのはなぜだろう
ついさっき このあいだまで
この手につかんでいた世界が
どこにも見当たらない
まあいいか
と風を受けて
さらりと諦めればいいものを
なんだっけ あれ
なんだっけ それ
たしかに ここに あったはず
カツーン
自分の靴音に驚けば
いまさら引き返せない
けれども思うんだ
これ全部
自分が望んだとおりじゃないか
って
いいもわるいも区別なく
あるのは感触
しっかり触れられる
形がなくても
手応えがある
なのに
見失ってしまうのはなぜだろう
って
そんなの決まってるよ
おれは変わりたいんだ
革命を企む地下室よりも
パレードを営む並木道よりも
自分が自分を支配できる場所
それがこの展望台
みごとに誰もいない
みごとに朽ち果てた歌のような
風とどろいて
ほら
やっぱりだ
あるんだよ
かんちがいじゃない
ここでなら見える
ここでなら触れられる
不確かな気持ちの
ゆらぐ理由
さわぐ根拠
なりたい自分になれる時間