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第14話

 下から見あげた展望台は

 たいしたことない


 そんなに大きくなくて高くもない


 と

 たかをくくってたら

 ひとつ

 組み木を登るたび

 視界が変わる


 組み木をひとつまた登ると

 眼下に波のあわだち

 遠いのに足すくむ


 夏休みあけの中間テストで成績順位が下がったことを

 激しい言葉で一時間半

 ああだこうだと

 ののしられ

 夏休みに遊んでたからだと責めてるくせに

 あなたのほうが被害者顔


 合理的な説明は嫌われて

 夏休みの過ごし方は関係ないんだよ

 だって

 中間テストの範囲あくまでも二学期からの授業内容

 予習復習さらに予習と頑張ってるけど

 ついていくのがやっとだよ

 ってちゃんと説明していたのに

 『そうかあせらずにまあがんばれ』

 って言ってくれてたのに

 まあとにかく

 さげすまれ

 ちょっとでも言い返そうものなら

 おれのほうが加害者顔


 夏休みに遊んでた体の火照りが冷めて

 恋人の背中を懐かしむ


 そろそろ急いでおりないと

 漁船は時間で戻るだろう

 たまにはこっそり居座りたいな

 おいてけぼりを空想した


 なんて自由で

 なんで孤独が

 こんなに甘く感じられる?


 なんて様子を

 なんで残せば

 伝えられるか考えたけど


 おれの身代わりに思考回路の働き全部を

 ここに置いて去ることにするよ


 桟橋で振り向いたら

 展望台の面影もなく

 立ちすくんだ気配も消えて

 波が漆黒に変わり始めた



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