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第11話

 ばったり会った

 やあとも言えず

 ぐうぜんだけど

 知っていた

 なんとなくだけど

 気づいてた

 根拠がないし

 科学的じゃない

 そもそもこんなの

 おれらしくない


 教室で言葉を交わしたことがない

 何度か廊下ですれ違ったから

 顔は知っている

 名前は…

 どうだろう


 知っているような

 知らないような

 少なくとも

 自己紹介しあったことなどない



 「よく来るの?」

 と思わず聞いた


 「たまにね」

 という答え


 それだけ



 風が気持ちいいのは最初だけで

 しだいに寒くなってきたよ

 たぶんからだが冷えたんだろう

 たぶん陽射しも弱まっていくよ


 「よく来るの?」

 と質問された


 「よく来るよ」

 と答えながら

 「でもここで会うの初めてだね」


 「うん」彼女が言う「そうだね初めてだね、でもね」


 海からの風は容赦なく髪をべたつかせていく


 でもね?

 なんだろうと思ったけれど

 質問するのも不自然に感じて

 おれは呼吸を整える


 まあいいか

 こんなこともあるさ

 まあいいや

 考え事したかったけど

 むしろ

 思い切り落ち込んでぶざまな自分に酔いたかったけど


 なんだろうこれこの感覚

 なぜだろうなぜなのか

 かっこつけようとしている

 おれが?

 うん

 まちがいない

 かっこつけようとして

 なにか自分が自分じゃないような

 たくらんでいる

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